107: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2016/07/02(土) 23:12:28.48 ID:g+YmgrcZo
ジュプトル「もー、いいだろ!」
ダゲキ「うん、いいよ」
ダゲキ「でも、ミュウツーと いっしょに、いくの ほうが さきだよ」
ジュプトル「く……」
そう呻くと、ジュプトルは手近な葉を掴んだ。
乱暴に口に放り込み、何度か噛んで「これまずい」と零す。
見上げるコマタナに「なんだよお」と唸る。
落ち着きのない姿は、思ったよりも見ていて飽きなかった。
ジュプトル「じゃ、じゃあ……けーけん つむ、ってやつ」
ダゲキ「つむ?」
ジュプトル「そう! ふやす!」
ダゲキ「ふーん……」
ジュプトルは少し誇らしげに言う。
ダゲキはそれを見て、ほっとしたような気分になった。
ここのところ、自分を取り巻く世界のさまざまな景色が、容赦なく変化していくからだ。
以前とは比べものにならない。
顔ぶれだけでなく、その彼らの心の内にも変化が訪れている。
その『変化』が、なんとも心躍ると同時に、恐ろしくてしかたない。
周囲ばかりが足踏みをやめて動き始めているのに。
自分だけがどうして、何も変われずにいるのだろうか。
自分によくしてくれるレンジャーのところへ行ってみればいいのだろうか。
あるいはミュウツーが言うように、その人間の女のところへ行けばいいのだろうか。
今までの自分らしからぬことをしていけばいいのだろうか。
あれほど嫌がっていたのに、自分を助けるため人間の前に出たミュウツーのように。
あれほど頑なだったのに、自分を憐れむことをやめたジュプトルのように。
楽しそうに話すふたりを前にして、ダゲキは少しだけ憂鬱になった。
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