253: ◆c6GooQ9piw[saga]
2016/04/23(土) 18:40:09.33 ID:GL279vN+O
答えるまでもない。
家族のいない杏子がこの年でまともに働けるわけがなく、そうなると、リンゴを手にいれる手段は限られる。
誰にでも想像はつくだろう。
さやかにも、それはわかったはずだった。
さやか「……」
そのとき、杏子にはある種の期待が芽生えていたのかもしれない。
心のどこかで、盗みを非難されることを望んでいたのだ。
杏子の間違いを正すことで、さやかが以前のように、目を輝かせて正義を語るようになることを期待したのだろうか。
しかし──
さやか「……まぁ、どうでもいいか」
杏子「……!」
杏子が期待した展開にはならなかった。
思わず、愕然とする。
さやかの口からそんな言葉が出てきたことが、信じられなかった。
さやか「……」
盗まれたリンゴであることはわかっているはずだ。
しかし、さやかに気にしている様子はない。
何の躊躇いも見せず、さやかはリンゴを食べようとする。
杏子「……ッ!」
さやかの口が、リンゴに近づいていく。
その光景は、まるで何かの象徴のように思えてならなかった。
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