文才ないけど小説かく 7
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427:薔薇の見える丘(お題:最強の女騎士まさかの敗北)1/6[saga]
2017/05/01(月) 00:11:24.06 ID:XkZMTs0r0
女は静かに墓石に野薔薇を手向けた。
ここは、王宮の庭に咲く色とりどりの薔薇が一望できる山奥の丘だ。森深く人気はない。
女はしゃがんで目を瞑り、手を合わせた。
風が女の白髪混じりの長い黒髪を乱した。
背後から草を踏む音が聞こえたので振り返ると、そこには見慣れた男の顔があった。
「お前は本当にここが好きなんだな。」
「ええ」
女は再び墓石に視線を戻した。
男が歩み寄り、女の隣にしゃがんだ。
男の手には赤い1本の薔薇が握られていた。
男は墓石の上に花を手向けると、目を瞑って暫くの間祈った。
そよ風が二人の髪や衣服を揺らした。
男がゆっくりと立ち上がる。
女は丘の向こうを見ていた。
やがて、男は森の奥に戻っていった。
女は男の足音が消えたのを見計らって、持っていた鞄から一冊の本を取り出すと、墓前に捧げた。
立ち上がり、スカートに付いた草を手で払うと再び丘の向こうに見える街並みを見ていた。
そして、急に何かを決心したような表情になった。
その面は唇を引き結び、眼光は鋭かった。
女は涙を必死に堪えていたのだった。
視界が歪み、街が、宮殿が滲む。
女は溢れる涙を拭うことさえせず、ただ佇んでいた。
丘に吹く風が女の置いた本のページをめくっていく。
風がやんだ。
女は森の奥へ歩き出した。
ページは最初に戻り、表紙になっていた。


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