文才ないけど小説かく 7
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413:タイトル:ぬくもり(お題:時代遅れ)1/6[saga]
2017/04/28(金) 00:35:59.86 ID:eOaQ9WgS0
雨水を吸い、風に晒され、私は静かに待っていた。
人が去ったあとはなんとなく侘しいものだ。
人のあたたかな体温を数十年経過した今でも静かに待ちわびているのか。

私は、フリーランスの建築士として働いている。郊外に自宅兼事務所を構え、早十数年、経営はぼちぼちで、のんびりとした毎日を送っている。
その日は一日中、窓から見える街路樹のハナミズキをぼーっと眺めていた。時計は午後2時40分を指していた。退屈に喝を入れるため、珈琲を淹れようと椅子から立ち上がり、背伸びし、腰に手を当てながら、腰を左右に動かしていた時、電話が鳴った。依頼だった。
 依頼内容は、学生寄宿舎だったアパートを改修してほしいというものだった。
 建物は、数年前に大学のキャンパスが移転してから、借手がつかなくなってしまった3階建てのアパートで、築50年以上経過しており、老朽化が進み、借手がつかないので、改修して、再び借手を募集したいという内容であった。
 今日は、依頼主のご主人と共に、物件を下見に行くことになっていた。
 街路樹のハナミズキの植えられた通りを抜けて、更に奥に行った所にその物件はあった。
 「こんにちは。」
 建物の前に小太りの中年の男性が立っていた。
 私は軽く会釈し、名刺を渡すと、お互いに簡単な挨拶を交わした。
 建物の外観は、埃や泥が染み込み、風が色を拭い去った色褪せたブルーで、築50年ということもあり、かなり老朽化していた。
 完全に時代に取り残され、時代遅れな外観をしていた。
 今のままでは、老人はおろか、若者が家賃が安い以外の理由で住みたいと思わせる理由がなかった。


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