366:背負うモノ 1/3 ◆d9gN98TTJY[sage]
2017/01/01(日) 21:17:23.44 ID:EVe1yNDXo
冷えたポッキーを咥えながら彼女がそう言った。
「抱負だって言ってんだろ」
「だからよ」
炬燵に両手を突っ込んで頭と口からのポッキーを付き出しながら
「シンプルで分かり易くて可愛いのがいいでしょ」と言った。
そういえば蜜柑が置いてあった。
手は自然と筆を半紙の横に置いてそれに伸びる。
やや柔らかくなった蜜柑は酸味が抑えられて甘味が際立つ。
無心で向いた蜜柑の一房を口に運ぼうとして、横からトドの様な動きのモノが
それを咥えて奪って行った。
彼女である。
せっかく可愛いというのに動きがもうトドである。
「トドみたいなのはどうかと思う」
「アザラシはトドとは違いますー」
「似たようなもんだろ」
「全然違うよ。鳴き声とか」
そうですかっとため息をつきながら、俺は次の一房を指でつまむ。
そしてまた奪われた。
「なにをするか」
「アザラシ」
「アザラシをしているのか」
「そうじゃなくて、抱負のをアザラシにしなよって」
食べながらでないと提案ができないのかとか、手で持てよとか、指が濡れてるとか
言いたいことはいろいろあったが
「文字通り抱えるものだぞ、アザラシを抱えろと?」という一言を優先した。
482Res/279.34 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20