351:家族の距離(お題:クレヨン)1/5[sage]
2016/12/28(水) 12:08:30.91 ID:K2s4O66Qo
僕は6つ年下の妹が大嫌いだ。今年6歳になるにすぎないが、彼女にはあるひどい癖があっ
て、そのことに僕以外は誰も気づいていない。だから僕ばかりがその被害者になる。ついでに言
えば、その醜い意地汚い妹の癖に気づかない僕の両親のことも、やっぱり僕は嫌いだ。
ある夏の夜に妹がぐずついた。「あたしのアイスがない!」
地団駄を踏んだり大きな声で泣いたりしたので、母親が心配げに「どうしたの」「なにがあっ
たの」と妹のそばに寄った。
母と妹はキッチンにいて、僕はリビングでテレビを見ていた。父は会社にいる時間なので、家
にいるのは三人だけだった。
僕はなんとなく嫌な予感がしていたが、何事もなく過ぎ去るのを祈ってテレビに見入っている
ふりをした。しかし予想通り「ちょっとお兄ちゃんこっち来なさい!」と母が金きり声で呼んだ
ので、祈りはそこで尽きた。
「なに、どうしたの?」
キッチンでは目を赤くした妹と彼女に寄り添う母が僕を待っていた。考えうる限り最低のシチ
ュエーションだった。
「どうしてあんたはそうなの? 妹にひどいことばっかりして……」
「僕が何かした?」
「サキのアイス食べちゃったでしょ、ねえ?」
母は妹に訊く。妹はこくんと頷く。
「知らないよ。確かにアイスは食べたけど、サキのものかどうかなんかわからないじゃん」
「自分のことばっかり考えて、あんたそんなんじゃ人に嫌われるよ。社会で生きていけない大人
になるよ。思いやりってものがないの?」
僕はアイスが誰のだとかなんとかいう小事件から、まさか人に嫌われるとまで非難されるとは
思わなかったので、ひどく頭にきた。
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