文才ないけど小説かく 7
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203:ななしのラムネ様(お題:ななし・ラムネ) 7/9[saga]
2016/07/01(金) 00:13:04.09 ID:Uf2E1B1ho

「わ、いい風」
 私の視界の中で、彼女の黒髪が揺れる。
 あの日から。ななしのラムネを見つけたあの日から、「俺」が意中の相手と両想いになれたのかは、わからない。
 わかるのは、結局その相手とはなんら進展することもなく、小学校も中学校も高校も卒業し、「俺」は東京の大学へ
進学。相手はふるさとに残り、しばらくして地元の何某さんと結婚したということだけ。
 それが、甘酸っぱくて、ほろ苦い感情の、正体。
 子供のうわさなんてその程度のものだと、「私」は潔く切り捨てた。
 今となってはそれも過去の思い出だ。むしろ過去がそうであったからこそ今の妻と結ばれることとなったのだと考え
れば、何も間違っていない道筋だと言える。
 そうだ。
 何も、間違ってなんていない。
 相手に気持ちを伝えられなかったのだって――間違って、いなかったのだ。
「ね。ね。知ってる?」
 懐かしい問いかけが、私の意識を今へと引き戻す。
「なにを?」
 私はもう俺ではない。関心のないふりだってお手の物だ。
 だけど。

「ななしのラムネ様ってね――ぜーんぶ、私の作り話だったんだよ」

 その言葉の意味は、すぐには理解できなかった。


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