文才ないけど小説かく 7
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197:ななしのラムネ様(お題:ななし・ラムネ) 1/9[saga]
2016/07/01(金) 00:04:26.09 ID:Uf2E1B1ho

 コンクリートジャングルを旅立ち数時間。真っ赤なローカル電車を降り立った私に真っ先におかえりを告げたのは、
耳が痛くなるほどの蝉の大合唱だった。
 東京へ移り住み早十余年。その中でもこうして帰省をした回数が両の手の指で十分にまかなえてしまうのは、さすが
に親不孝者の証か。帰るたびに強いノスタルジィが襲うものの、やはりここは私にとって不便さの象徴でしかなかった。
 私にとってもう、帰るべき家といえば、妻と子の待つマンションの五階のあの部屋だけなのだ。
 そんな私をこうして帰郷へ導いたのは、先日届いたふるさとからの便り。六年間通った小学校が取り壊されるから久
しぶりに集まらないかという、旧友からの報せであった。
 学校と言ってもしょせんは田舎の小さな学び舎である。一学年に生徒は十人もおらず、それが六年間も続くのだから、
クラスメイトは皆仲の良い友達のようなものだ。その面々に久しぶりに会えるかもしれないという淡い期待の方が、
実のところ母校がなくなることより私を故郷へ向かわせた要因としては大きかった。


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