182:夕立2/4[saga]
2016/06/22(水) 18:32:19.16 ID:GZmCfzRq0
自分は死神なのかもしれない、と。最近読んだ小説の中に出てきた死神だ。その死神は仕事のために下界に降りてくると
いつも雨が降っているのだ。そして、自分は晴れ間を見たことがないと。
ユキコもこうして自分が雨に見舞われているときに誰かが死んでいるのかもしれないと想像してしまう。
そんなわけはないのに。でもいつも、降ってほしくないときに雨が降るものだから、雨と死神を結びつけて想像してしまう。
それに自分は雨女だ、と考えるより死神と思ったほうがなんとなく、かっこいい。
そんなとりとめもない妄想を続けていると、やがてバスがやってきた。
ユキコを乗せたバスはガタガタと揺れながら発進し、ゆったりと進んでいく。住宅街を抜けて小学校前、スーパーの前、
他に何もない歩道にぽつんとあるバス停の前を通りすぎ、やがて一つの高校の前で停車した。
バスの中ほどから乗車してきた一人の女の子と目があってユキコははっと息を呑んだ。
中学生の頃の友達だった。それも一番仲のよかった、アキだった。
アキもユキコを見つけて目を見張り動きをとめるが、やがてガタガタと揺れて発進したバスに慌てて近くの席に座った。
ユキコはバスに揺れるアキの背中を見つめながら、なんで!? どうして!? と頭の中で繰り返した。
アキとは中学の卒業式以来、連絡を取っていなかった。いや、それ以前、高校の合格発表のあの日を境に連絡はおろか
口すら利かずまったくの疎遠となっていた。
ユキコとアキは同じ高校を受験し、その日は父の運転で高校に張り出される合格者通知を共に見に行ったのだ。
そんな一大イベントであるにも関わらず、その日は珍しく晴れていたのを覚えている。
アキも「こんな日に晴れるなんてきっと良い結果だよ」と緊張を隠すように笑っていた。
「ひぃ〜ウチ、死ぬかもしれへん。口から心臓が出て死ぬかもしれへん……」
高校に到着し、いざ掲示板を前にしたユキコは緊張のあまり卒倒しそうになっていた。
アキはそんなユキコを「よしよし」と宥めて「よし、せーので一緒に見ようか」と言った。
「う、うん。せーのね。せーの、ね!?」
「せーの!」
「ひぃ〜!」
ユキコは恐る恐る目を開き掲示板を見上げた。
4446。それがユキコの受験番号だった。1000番台、2000番台、3000番台と飛ばし、4000番台から番号を目で追っていく。そして。
「あ、あった! あったあった! あった!」
ユキコは自分の受験番号を見つけて、喜びのあまりアキに抱きかかった。
「アキは!? アキは受かった!?」
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