勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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75:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:44:58.66 ID:09+TUdRc0
 もう何度、切り裂かれたのだろう。
 勇者の体が再びその場に崩れ落ちる。

僧侶「う、うぅ…ひぐ…!」

 勇者に向けて回復呪文を行使する僧侶は、もう泣きじゃくってしまっていた。
 傷の塞がった勇者が、のそりと立ち上がった。

騎士「そらぁッ!!!!」

 勇者が立ち上がると同時に騎士が勇者に斬りかかる。
 勇者の剣を掻い潜り、その腕を、その足を、その肩を、その胸を貫いていく。
 どさりと勇者の体が崩れ落ちた。
 どう見ても致命傷だ。
 放っておけばすぐに死んでしまう。
 僧侶は再び勇者に向かって回復呪文を行使せざるを得なかった。

騎士「おいおい……ひでえ女だな。もう死なせてやれよ」

 杖を振る僧侶に、騎士は呆れたように声をかける。

僧侶「うぐ…ひぐ…あなたこそ、どうしてこんな、私達を弄ぶようなことを……」

 僧侶は嗚咽まじりに騎士に対してそう言った。
 そうだ、騎士は遊んでいる。
 本気で勇者達を全滅させようと思えば、騎士が狙うべきはまず僧侶であるはずだ。
 そしてそれをあっさり実行してしまえる実力を、騎士は持っているはずである。

騎士「全員殺すのは簡単だよ。でもさあ、見てえじゃん? 心が折れて、俺に完全に屈服するところをさ」

僧侶「外道…!」

勇者「そいつの言うことに耳を貸すな……僧侶ちゃん……」

 勇者がのそりと立ち上がり、言った。

勇者「これから先、何があろうと……僧侶ちゃんは決して折れずに、俺を回復し続けてくれ……」

僧侶「勇者様……」

騎士「勇者…」

 騎士は立ち上がった勇者に歩み寄り―――剣を使わず、その頬を殴りつけた。

勇者「ぶ、が…!」

 騎士はそのまま襟首を掴み、勇者の体をうつ伏せに引き倒す。
 その後、騎士は勇者の背に乗って体を押さえつけ、勇者の自由を奪った。

騎士「ほんっと、折れねえよなぁ。お前は」

 勇者は騎士を振り落そうと踠くが、圧倒的な力の差によりそれは叶わなかった。
 騎士は精霊剣・湖月を鞘に仕舞う。

騎士「別に他の奴なら一思いに殺ってやってもいいけどな。お前だけは別だ。お前だけは、お前が被ってるその気持ち悪い化けの皮を剥いでやらなきゃ気が済まねえ」

 騎士は鞘に仕舞った状態のまま、湖月を振りかぶった。

騎士「言えよ、勇者」

 騎士は湖月を振り下ろす。
 鞘に仕舞ったままの状態のそれは、勇者の右手、その指先を叩き潰した。

勇者「ぐああッ!!」

 人差し指と中指が折れた。第二関節の辺りから逆さに折れ曲がった指の姿が勇者の目に映る。
 勇者の見ている前で、同じところが再び叩き潰された。

勇者「う、ぎ、ああああああああああ!!!!!!」

 その苦痛は筆舌に尽くしがたい。反射的に勇者は足をばたつかせ、全身を跳ねさせるが騎士の体は勇者の背中から全く動かない。

騎士「嘘をついてましたと言え。綺麗事を言ってましたと言え。他人より自分が大切ですと言え」

 一言発する度に騎士は勇者に向かって鞘に入れた剣を振る。
 狙われる場所は指先から手首へと徐々に移行し、勇者の体は先から少しずつ粉砕されていく。

勇者「ぐう、ぐ、うぎ、があ!!」

僧侶「いやあああああああああ!!!!!!」

 見かねた僧侶が駆け寄り、騎士に向かって杖を振り下ろした。
 しかしそれもあっさりと騎士に片手でいなされ、その動きだけで僧侶の体は宙を舞い周りの樹に叩き付けられてしまう。



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