勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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712: ◆QKyDtVSKJoDf[saga]
2017/11/03(金) 20:13:52.64 ID:uAQKxthS0
抱きしめた。
言葉も出なかった。
涙は滝のように溢れ、嗚咽が怒涛の如く込み上げた。
戦士「えぐ、うぐ、ふぅ、う、うぅぅ〜〜〜!!!!」
勇者「ごめんな。ずっと辛い思いをさせちまった」
戦士は勇者の胸に顔を埋めながら、ううんと首を横に振る。
光の精霊『感動の再会に水を差すようで申し訳ないが、少しいいかな。戦士』
光の精霊の声が響く。
ぐしゅ、と鼻をすすり上げて、戦士は勇者の胸から顔を上げた。
光の精霊『実はね、先ほどは不可能など無いと嘯いてみせたが、遠い過去に死んで、魂すら失せた人間を今更生き返らせることなど、いくら今の私でも出来ないのだよ』
光の精霊『通常は、だがね』
光の精霊『それが可能となったのには理由がある。要はだね、勇者の魂は消えることなく君の傍らにあったのだ。魂が今もなお存在していたからこそ、私は願いを叶えられた。なにしろ肉の器を用意するだけでいい。その程度であれば今の私の力なら容易いものだ』
光の精霊の言葉の意味を理解した戦士は、目を大きく見開いて勇者の顔を見上げる。
勇者は照れたように、あるいはばつが悪そうに、ぽりぽりと頬を掻いてはにかんでいた。
戦士の目から、ぽろぽろと大きな涙が次から次に零れ落ちる。
戦士「ずっと―――ずっと傍にいてくれたのか。今までずっと……ずっと――――!!」
勇者「だって、お前ときたら、本当に俺の為だけに生きてるんだもんな。途中でお前が俺のことを忘れて他の奴になびいてたりしたら、俺もこう、気兼ねなく成仏的な感じになろうと思ってたのに――――」
―――――勇者の言葉は戦士の唇で遮られた。
最初は驚きに目を見開いていた勇者も、やがて目を閉じ、戦士の体を抱きしめる。
長い間、二人は互いの体を強く抱きしめたまま、口付けを交わしていた。
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