勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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679: ◆QKyDtVSKJoDf[saga]
2017/11/03(金) 18:28:06.02 ID:uAQKxthS0
だけど、この女性が戦士であるはずはない。
三十年。三十年だ。
あれからもう三十年もの月日が経過している。
つまり戦士はもう五十歳に届こうかという年齢になっているはずだ。
目の前の女性の年代は二十の半ばから、どんなに多めに見積もっても三十の前半だ。
だから、この女性は戦士本人ではない。
だとすれば、そう、この女性の正体は―――――
勇者「もしや君は―――――戦士の子供なのか?」
ぴくり、と女性の眉が上がった。
勇者「は、はは……」
勇者の胸中に複雑な思いが溢れた。
けれど、様々な感情がない交ぜになって込み上げる中で、最も大きかったのは――――安堵の気持ち。
勇者「……良かった。幸せになれたんだな、彼女は……」
女性「おい…」
眉根にしわを寄せて、女性は勇者の顔を覗き込んだ。
勇者の目には、これ以上ないほどの慈しみの感情が満ち溢れている。
勇者「ふふ……俺に、こんなことを問う資格なんて無いんだけど……正直、気になってしょうがないな。教えてくれないか? 戦士は、君の母さんは……一体どんな奴と結婚したんだ?」
ビシィ!と空気に緊張が走った。
女性のこめかみに血管が浮かび上がり、ひくひくと蠢いている。
女性「おい…!」
それは地の底から響いてくるような、低くドスのきいた声だった。
勇者「……ん? あれ?」
様子を一変させた女性の剣幕に、勇者は恐怖を覚え後ずさりする。
しかし腕を掴まれた勇者は逃げられなかった。
はう、と息を飲む勇者。全身を突き抜けていくこの絶体絶命感。
それはすごく――――――ものすごく、懐かしい感覚だった。
勇者「もしかして……」
女性は掴んでいた勇者の手を放し、がしりと胸倉を掴みなおした。
そして、女性はすぅ〜、と息を吸い始めた。
吸って、吸って、吸って―――――そして。
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