勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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667: ◆QKyDtVSKJoDf[saga]
2017/11/03(金) 18:18:47.13 ID:uAQKxthS0
――――雲一つない青空。
一面に広がる黄金色の小麦畑。
涼やかな風がたわわに実った穂を揺らした。
荷台にくくられた馬は、たてがみを靡かせながら街道沿いでのんきに草を食んでいる。
「んしょ。んん…!」
小麦畑には、うんうんと唸りながら収穫作業を行う二人の少年の姿があった。
二人とも顔立ちがよく似ている。きっと兄弟なのだろう。
年の頃は―――兄が10歳ほどで、弟はその二つか三つ下といったところだろうか。
二人とも額に汗をかきながら一生懸命小麦を掴み、鎌を振るっている。
ふと、ごろごろと雷の音が聞こえて、弟は空を見上げた。
天気は変わらず快晴で、雨雲らしきものはひとつも見当たらない。
弟は怪訝に思って周りを見回すが、兄も、少し離れたところで作業をしている父も雷の音を気にした素振りは見せず、急な雨を警戒する様子もない。
弟「……?」
首を傾げる弟だったが、すぐにその疑問は彼の頭から消えた。
道の向こうに、彼の敬愛する祖父の姿を見つけたからだ。
弟「うわあ〜! じいちゃん、すっげえ〜!!」
弟も兄も、実に子供らしく大はしゃぎで声を上げた。
彼らの祖父は、なんと2m四方に及ぼうかという小麦の束を担いできたのだ。
重さは500s以上あろう。
およそ人が持ち上げられる重さではない。いわんや、担いで歩こうなど。
兄「俺も早くじいちゃんみたいに力持ちになりたいなぁ〜」
兄が無邪気に願いを口にした。
荷馬車の荷台に収穫した小麦を下ろしながら(それは片腕で抱えられるほどの量で、精々2〜3s程度だ)、父は苦笑して言った。
父「じいちゃんみたいには無理だよ。あの人は、ちょっと特別だからな」
弟「とくべつ?」
弟が聞き返した。
父「ああ、特別だ。なんせあの人は、大魔王を打倒してこの世界に真の平和をもたらしたあの勇者様のパーティーの一員だったんだからな」
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