勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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419:名無しNIPPER[saga]
2016/11/06(日) 01:29:29.94 ID:ZSsiH8ra0
伝説の勇者「こういう風に――――な!!」
『伝説の勇者』が動く。
ただならぬ気配を感じ取った勇者は反射的に防御の体勢に移行する。
しかし勇者の防御をあっさりと潜り抜け―――『伝説の勇者』の剣が勇者の体を切り裂いた。
勇者「あ……」
勇者は信じられぬといった面持ちで自身の体を見下ろしている。
その体に刻まれた傷の様相は、まさしく幼少の頃の再現であった。
鮮血が噴き出し、勇者の体が崩れ落ちた。
戦士「いやあ!!!!」
戦士が勇者に駆け寄った。
うつ伏せに倒れた勇者の傍らに膝をついて、戦士は涙に濡れた目で『伝説の勇者』を睨み付ける。
戦士「『伝説の勇者』様……!! どうして…こんな……どうして……!!」
『伝説の勇者』は戦士から顔を逸らした。
いや、正確には血を流し続ける己の息子から目を逸らしたのだ。
伝説の勇者「……これでわかっただろう。私にすら及ばぬ者が大魔王に挑んでも、徒に命を散らすだけだ」
『伝説の勇者』は必死で表情を取り繕い、厳しい視線を戦士に向ける。
伝説の勇者「勇者を担いで『向こう側』に帰れ、戦士。そして二度と魔界に戻ってくるな。人類に出来るのは大魔王の『間引き』が早々に終わるのを願うことだけだ」
それだけ言い捨てて、『伝説の勇者』は再び戦士と勇者に背を向けた。
戦士「う、うぅ…!」
ごそごそと戦士が荷物を探る音が聞こえてくる。
おそらく手持ちの薬草で勇者に応急処置を施すつもりなのだろう。
つまり戦士は完全に剣を置いたという事だ。もうこちらに向かってくるということはあるまい。
何とか自分の思惑どおりに事が進み、『伝説の勇者』はほっと胸をなで下ろした。
勇者「……『呪文・大回復』」
聞こえてきた勇者の言葉に、『伝説の勇者』も戦士も目を見開く。
『伝説の勇者』は後ろを振り返った。
勇者の体が仄かに輝きを放っている。
やがて勇者がのそりとその場に立ちあがった。
伝説の勇者「勇…者……」
『伝説の勇者』は祈るような気持ちで勇者の動きを注視する。
勇者はにへら、とその顔に笑みを貼りつけ、精霊剣・湖月を構えた。
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