勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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415:名無しNIPPER[saga]
2016/11/06(日) 01:26:18.34 ID:ZSsiH8ra0
大魔王『……とまぁ、こんなところだ。魔界のクソッタレな現状ってのが少しでも伝わってくれたのならありがたい』

伝説の勇者『まさか…そんな……』

大魔王『―――俺は魔界を救う。その為にお前の力を貸せ。「伝説の勇者」よ』

伝説の勇者『お、俺の力を…?』

大魔王『そうだ。俺は「向こう側」の、お前たちの世界の知識が欲しい。お前達「人間(ヒト)」の営みを、俺はこの魔界で再現したいのだ』

大魔王『そのために、「伝説の勇者」よ。俺の下につけ。俺の下につき、お前の世界の事を俺に教えるのだ』

伝説の勇者『お、俺に人類を裏切れというのか』

大魔王『断るのならば仕方がない。その場合はお前にはここで死んでもらう。「向こう側」にこちらの真の目的を伝えられても厄介なのでな』

大魔王『しかし協力を約束するのならば俺はお前に最大限便宜を図ろう。生活に不自由はさせないし、必要な時以外はお前の行動を一切束縛することはない。お前は、自由だ』

伝説の勇者『……ッ!!』

大魔王『揺れたな。ふむ、やはりお前の核はこの辺りか。気になってはおったのだ。「世界平和」などという曖昧模糊な理由の為に、単身魔界に乗り込んでくるなどと常軌を逸している。狂気の沙汰だ。その行動理念について、俺は少し考えてみたのだ』

大魔王『察するに、お前は降りられなくなったのではないか? 皆の期待に応え続けたことで、応え続けすぎてしまったことで、次第にお前は皆が期待する通りにしか動けなくなったのではないか? 「伝説の勇者」たる者こうでなくてはならない、そんなイメージを誰よりも強くお前自身が持ち続けてしまったのでは?』

伝説の勇者『う、あ……』

大魔王『うむ、その顔が何よりも雄弁に答えを物語っている。「伝説の勇者」よ。良いのだ。お前はもう「伝説の勇者」を辞めていい』

伝説の勇者『ち…が、う…!! 違う!! 俺は、俺の意思でここに来た!! 俺には守りたいものがある!! その為に、ここでお前に屈する訳には』

大魔王『お前が俺に協力すればお前の家族の命は保障しよう。俺手ずから調整し、お前の故郷には決して強力な魔物は近づけさせん』

伝説の勇者『………ッ!!?』

大魔王『正解か。そうだよな。家族は大事だ。その気持ちは俺にも痛いほどよくわかる』

伝説の勇者『う、ぐ…! く、うぅ……!!』

大魔王『まったく強情な奴だ。わかったわかった。しょうがないから、俺がお前を負けさせてやる』





大魔王『こう言えばよいのだろう? ―――――家族の命が惜しければ、俺の軍門に下れ。「伝説の勇者」よ』







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