勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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403:名無しNIPPER[saga]
2016/11/06(日) 01:19:04.17 ID:ZSsiH8ra0
 さて、更なる転機が訪れたのは彼が王宮騎士団に召し抱えられて五年が経った時のこと。

 隣国との小競り合いの最中、件の騎士団長が戦死した。

 歴戦の勇士として名高かった騎士団長は、戦時の混乱の中、誰が放ったかもしれぬ流れ矢に倒れた。

 矢尻には毒が塗られていた。

 騎士団長はもがき苦しみ、傍らにいた彼に介錯を頼んだ。

 無論彼は拒んだ。諦めてくださるなと懇願した。

 しかし間に合わぬと騎士団長は断じた。

 早くせよ。間に合わぬ。毒では駄目だ、『お前がやらねばならぬのだ』。

 その時、騎士団長の言葉の意味を深く考察できるほど、彼は冷静ではなかった。

 彼は騎士団長に対して非常に大きな恩義を感じていた。

 だから彼は、騎士団長の願いのままに介錯し、その亡骸に縋りついて涙を流し、慟哭した。

 その時生じていた不可思議な現象には目もくれず。

 『加護の継承』。

 騎士団長がその身に宿していた精霊の加護が、彼の身に移行していた。

 それも一部ではなく、一分の残りもなく――――全て。

 彼が自身の異常に―――自身の力が飛躍的に向上していることに気付いたのは、騎士団長の葬儀を終えて、落ち着いてからだった。

 彼はそれを奇跡と解釈した。騎士団長の遺志によりその使命を託されたのだと信じた。

 以降、彼は『国を守ること』を絶対の使命として己に課し―――――彼は騎士団史上最年少かつ最速で騎士団長の立場に就任する。

 まずはこれが、彼の伝説の始まり。






 ――――もはや殊更に述べる必要もないかもしれないが、一応訂正しておこう。


 彼が何の変哲もない農家の生まれというのは、誤りだった。


 どうも、どうやら――――彼の出自は中々に複雑なものだったらしい。






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