勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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282:名無しNIPPER[sage saga]
2016/06/26(日) 19:30:39.19 ID:Trw4ei5x0
 しばらく勇者は、ぼうと呆けて戦士の顔を見つめていた。
 戦士の言葉の意味がゆっくり脳味噌に浸透するにつれて、勇者の顔にも赤みがさしていく。

戦士「私はお前を愛している。勇者」

 追撃された。勇者の顔が一分の隙間もなく真っ赤に染まる。

勇者「なあ?!? はぁ!?! ほぁぁ!!? へぇ!?」

 混乱した勇者はあたふたと腕を無意味に動かし、視線をあっちこっちと彷徨わせた。
 そんな勇者の様子に、戦士はくすりと優しく笑う。

戦士「少し落ち着きなさい、勇者」

勇者「な、は、ふ……で、でも、だって、戦士は『伝説の勇者』のことが……」

戦士「それなんだけどな、どーしてそんな風に誤解するんだ。私が『伝説の勇者』様に抱いていたのは師弟としての純粋な敬愛だ。そこに男女の情は一切ない」

勇者「でも、でも、だって……」

戦士「それに……さっきな? お前があの町を飛び出して行ってしまっただろ? あの時、私はすぐに後を追いかけようとしたんだが……あの人に名前を呼ばれて、つい足を止めてしまった」

戦士「すぐに我に返って、何か話しかけてこようとしたあの人を振り切ってお前を追いかけたんだが、既に遅くて、私はお前の姿を見失ってしまった」

戦士「その時、本当に本当に後悔したんだよ。どうして一瞬でも立ち止まってしまったのかって……そして、気付いたんだ」

戦士「私は『伝説の勇者』様を敬愛してやまなかった。それが高じて当初はお前とも衝突していたくらいにな。なのに、その理想が目の前で崩れ去ったのに、私にその悲しみは驚くほどなかった」

戦士「それどころじゃなかったんだよ。お前のことが心配過ぎて」

戦士「はっきり言って、その時の私は『伝説の勇者』様のことなんてもうどうでも良くなってたんだ」

戦士「お前のことだけが心配だった。お前の気持ちを考えると胸が張り裂けそうだった」

戦士「だからこうしてお前とまた会えて……本当に安心しているんだ。本当に嬉しいと思っているんだ」

戦士「だから、お願い………死ぬなんて、言わないで」

戦士「これからもどうか………私と一緒に生きてほしい」





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