勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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276:名無しNIPPER[sage saga]
2016/06/26(日) 19:24:44.72 ID:Trw4ei5x0
勇者「うるせえってんだよ!! ふざけんな!! 俺は俺だ!! あんなクソ野郎の息子なんかじゃねえ!! 俺なんだ!!」
勇者「もういいよ! やってらんねえ!! 『あんな奴の息子』なんて、もうやってられっか!! 知ったこっちゃねえ! 俺は、俺の生きたいように生きてやる!!」
勇者「は、ははは…! そうだ、すぐに元の世界に戻ってハーレムを作ってやろう!! 俺が本気で口説けば、女なんかいくらでも寄ってくるぜ!! 何せ俺は『伝説の勇者』様の息子なんだからな!!」
勇者「あんなクソ野郎の重荷を継いでこれまでの人生を無駄にしちまった分、名前くらい利用して楽しませてもらうぜ!! ……へ、へへへ、そうだ、黒髪の少女やエルフ少女もハーレムに加えてやる。あの二人の事だ。俺が誘えば、きっと喜んでケツを振るぜ」
勇者「は、ははは!! アハハハハハハハハハ!!!!」
ヒタリ、と足音が聞こえた。
びくりと肩を震わせて勇者は音のした方を振り返る。
そこには、頭のない男が立っていた。
男の頭は脇に抱えられている。その顔は腐食が進んで髑髏と化しており、それが誰なのか顔からは判別できない。
しかし綺麗に切り離された首の切断面と、男が身に着けていた『善の国大神官団』の法衣が、勇者に男の正体を推測させた。
勇者「何だよ…?」
勇者は目の前の亡霊に問う。
しかし亡霊は黙して語らない。
勇者「な、なんだよぉ…! 『俺を否定したくせに』とでも言うつもりか!? だ、だけど俺とお前じゃ状況が違う! 俺は裏切られたんだ!! 俺に役目を押し付けたあの野郎は、英雄気取りのクソ野郎だった!! 俺は、お前とは違う!!」
ヒタリ、ともうひとつの足音。
振り返る。
そこに、右腕を無くした男が立っていた。
やはり顔は腐食して髑髏が露出しており、その男が誰なのか顔からは判別がつかない。
だけど、その金髪に、額の赤いバンダナに、勇者は見覚えがありすぎた。
勇者「………駄目か…?」
勇者は弱々しく二人の亡霊に問う。
亡霊は黙して語らない。
ただじっと、眼球の無い眼窩の暗闇が勇者を見据えている。
勇者「………そうか……駄目か…」
勇者は肩を落とし、ぽつりとそう呟いた。
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