勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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209:名無しNIPPER[saga]
2016/05/08(日) 17:13:15.11 ID:niX7BoNT0
勇者「……なんて言ってたのに、俺が幸せを祈っていたはずの彼女は俺の傍で一緒に魔界に挑もうとしているのでした。まる」

戦士「何を一人でぶつくさ言ってるんだ」

 しみじみと思いを馳せていた勇者に戦士から呆れ気味の声が飛ぶ。
 勇者と戦士の二人は魔王城の最深部、騎士の話にもあった泉の前にやってきていた。
 二人は共に泉を覗き込む。

勇者「……騎士の言ってた通りだ。水の底に空が見える」

戦士「この場所は魔王城の中だから、水面に空が反射しているという訳ではない。それならば石造りの天井が映るはず」

勇者「うわ〜、何コレすっごい気持ち悪い。水底がないなら何であっちに水が落ちていかないの? 感覚的にすっごい気持ち悪い」

戦士「向こう側に見えているのが魔界の空ということか…? なんだ? 潜ってあっち側に向かえばいいのか?」

勇者「騎士は単純に飛び込んでしまえばいいと言っていたけど……まあ剣とか装備品持ったまま飛び込めば、重さで勝手に沈むわな」

勇者「でも俺が怖いのはそのまま向こう側の空に落ちていっちゃうことなんだよね。空に落ちるとか何それ怖い。どこまで落ちて行っちゃうの? 空の果てはどこにあるの?」

戦士「そんなものは学者にでも考えさせておけ……行くぞ勇者。覚悟を決めろ」

勇者「相変わらずの即断即決……オットコ前やでえ……」

戦士「それは褒めてるのか? 貶してるのか? それともからかってるのか?」

勇者「ほ、褒めてますです、はい」

戦士「そういう褒め方は今後控えろ……私だって女なんだ」

勇者「ア、ハイ、スンマセンッス」

 唇を尖らせてぷい、とそっぽを向いてしまった戦士の反応が予想外過ぎて、勇者は咄嗟に小声で小者のような返事をしてしまった。
 気を取り直して、勇者は自分の荷物の中からロープを取り出した。

勇者「念の為に、俺と戦士の体をロープで繋いでおこう。万が一分断された状態で魔界に放り出されたら危険だからな」

戦士「いらん」

勇者「ほえ?」

戦士「手を繋げばよかろう。分断を危惧するなら、いつ千切れるか分からんロープを使うよりそっちの方が確実だ」

 そう言って戦士は水面から視線を外さぬまま後ろにいる勇者に手を差し出してくる。

勇者(お、オットコ前やでえ……)

 先ほどの一幕で学習した勇者は、今度は感想を口に出さずに心の中に留めておくことに成功した。
 戦士の手を握り、その隣に並び立った勇者は気づかない。
 勇者が男前と評した戦士は、頬を桃色に染めて口をもにょもにょさせていた。




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