勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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16:名無しNIPPER[saga]
2016/01/31(日) 21:45:55.47 ID:zBP9Ql630
退屈が嫌いだった。
人生を半分無駄にした分、これからを楽しまなきゃという気持ちが強かった。
故郷を滅ぼし、後始末を終えて、やることが無くなった。
さて、これからどうしようかと悩み―――とりあえず魔王城を目指すことにした。
戦うことは好きだったから、暇つぶしになればと思い、魔王城に乗り込んだ。
どこにこれだけ隠れてたんだってくらい大量の魔物が襲って来たけれど、誰も自分に傷一つつけられなかった。
獣の王、なんて大仰に名乗った猫ちゃんは少しばかり歯ごたえがあったけど、それでも自分の全力を引き出すには遠く及ばなかった。
そのままあれよあれよと奥に進み、遂には魔王と対面し、剣を交えて――――
なんとまあ、驚くべきことに、そのままあっさり魔王に勝ってしまった。
かなり拍子抜けした。こんなものなのかとがっかりした。
同時に、こうも思った。
これで、こんなもので、世界は平和になってしまうのか―――と。
自分なんて世界じゃ無名もいいところだ。
誰とも知れない人間が、いつの間にやら魔王を倒し、世界を平和にしてくれた。
世間の人々はどう思うだろう。
ラッキー、助かった。これで安心して暮らしていける。なんて幸運なんだ、我々は!
――――そう想像すると、非常に気分が悪かった。
まったくもって気に喰わなかった。
だから、魔王の命乞いを聞き届けた。
仲間にならないかという誘いも受けた。
こうして、『暗黒騎士』という魔王の側近が生まれた。
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