勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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13:名無しNIPPER[saga]
2016/01/31(日) 21:43:36.62 ID:zBP9Ql630
騎士「茶番はよせよ、勇者」
騎士は呆れたように勇者にそう声をかけた。
勇者の肩がピクリと震える。
勇者「茶番…?」
騎士「俺はお前の事を良く知ってる。お前の性格は熟知してる。お前は臆病で―――慎重だ。お前は決して、勝ち目のない戦いは挑まない」
騎士「お前は必ず、ある程度勝ちの算段をつけてから戦いに臨む。今回だって、そのはずだ。あるんだろう? 俺を倒す、何か『切り札』のようなものが」
騎士「それを見せろよ。うだうだと、くだらねえ時間稼ぎなんてしてんじゃねえ」
勇者と騎士の視線が交差する。
ふぅ、と勇者は息を吐いた。
勇者「分かったよ。見せてやる。だけど、その前にひとつだけ聞かせてくれよ」
騎士「なんだ?」
勇者「騎士……お前はどうしてあの時、武の国で俺を救ってくれたんだ? どうしてわざわざ、壊れていた俺を元に戻してくれたんだよ」
勇者「お前が『暗黒騎士』だっていうんなら、俺は壊れたままでいた方が良かったはずだ。あのままだったら、俺は多分、ここまで辿りつくことは出来なかった」
勇者「そっちの方が、魔王軍として都合が良かったはずだ……なあ、教えてくれ。お前は一体どうして……」
騎士「ああ、なんだそんなことか。そんなもん決まってるじゃねえか」
騎士はあっけらかんと笑った。
騎士「教えてやるぜ、勇者。俺の行動理念はいつだって、どんな時だって、たったひとつだ。お前を救ったのだって、それに従っての事に過ぎない」
騎士の笑みに悪意はない。
純真無垢とすら言ってよかった。
だからこそ――――『有害』と彼を評した勇者の言は、正鵠を射ていたのかもしれない。
騎士「つまり――――そっちの方が面白そうだったから、だ」
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