本田未央「プロデューサーとのごはん」 その2
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756: ◆Tw7kfjMAJk[sage saga]
2019/01/20(日) 18:24:32.44 ID:eq8ixgN30

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「ほうほう……ここが今日のお店ですか」

『とんかつ』と書かれた暖簾を掲げた店の前、未央は腕を組んでふむふむと店の外観を眺めていた。どうしてか訳知り顔だが未央は店の外観を見ただけでどのような店なのか察する能力なんて持っていない。ので、プロデューサーは「そうだな」と適当に返して暖簾をくぐり、未央も「つめたーい」と言いながら彼に続いた。

 内観もそれほど珍しいものではない。調理場の前にカウンター席が並び、その向かいにテーブル席がふたつ……いや、奥にもひとつ見えるので合計でみっつか。

 カウンター席はすでに埋まっており、テーブル席も入口からすぐのところ以外は埋まっていた。どうやらけっこうな繁盛店のようだ。席が空いていたのは僥倖だ。

 上着をかけ、席に着く。メニューを開けば、そこにはいくつかの定食が。

「ロースにヒレ、それからチキンカツやミックスフライ。今の時期は牡蠣フライも、か……」

 牡蠣フライ。これは冬季限定だ。すべて人類は『限定』という言葉に弱いものだが、もちろん未央も弱かった。しかし、今日はとんかつを食べに来たのだ。初めての店ということもあるし、やはりとんかつをいただくべきだろう。

 となれば、あとは何のカツにするか、である。大きく分けるならロースかヒレということになるが、それぞれ『特』の名を冠する上位メニューが存在していた。なんならロースはグラム数別にもわけられている。

 これは……どうするべきなんだろうか。未央はとんかつの知識がそれほどあるわけではない。ちらりと彼の顔を見ると、彼もまた未央のことを見ていた。

「えっと……プロデューサーは、もう決まってる?」

「ああ。特ロースの三〇〇。この店ではこれがベストだ」

 ベストらしい。なら、私も……と思うけど、三〇〇ってけっこうおっきくない?

「そうだな。だいぶ大きい」

「だよね」

 食べきることができるかどうか……未央は考える。なんだかんだでいつもはだいたい食べきることができるのだが、三〇〇と数字で表されると尻込みしてしまう。でも、プロデューサーがベストって言ってるからなー……よし!

「私も、三〇〇にする。挑戦するよ、プロデューサー」

「挑戦か」

「うん。失敗したらよろしく」

 そういうことである。もしものときは彼がなんとかしてくれる。曰く、『信頼してるよ、プロデューサー!』とのことだ。

「どういう信頼だよ……」

「まあまあ。とりあえず、頼も?」

「……だな。すみません」

 プロデューサーが手を上げて店員を呼び、注文を伝える。店員が言うには揚げるまでにけっこうな時間がかかるらしい。三〇〇となれば分厚いとんかつであろうし、それを低温で揚げるのであれば時間がかかってしまうのも仕方ないことだろう。と言っても、ふたりで話していればそんな時間はすぐに過ぎる。



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