女神
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447:名無しNIPPER[saga]
2017/05/31(水) 23:21:20.89 ID:Ww3oqi+ko

 こいつは唯の恋敵だったし、俺は別にこいつのことを女として意識したわけではなかっ
たから、最初の再会以外はこいつとかかわるのはやめようと俺は考えていた。それにこい
つと仲良くしていたら、そのことを姉さんには報告しづらいし、かといって姉さんに秘密
を作るのも嫌だったし。

 でも、結局、俺は優と仲のいい友人関係になってしまった。

 同じクラスになったということもあるし、周囲が地元の友人ばかりで、同郷の優と話が
あったということもある。また、それ以上に俺と優を仲良くさせたのはお互いの両親だっ
た。

 つまり、再会後に判明したのだけど、二見優の親父さんは俺の父親の仲のいい同僚だっ
たのだ。うちの親父はメーカーの研究所に勤務している研究者で、優の親父さんとは同期
だそうだ。今までは行き違っていたそうだけど、この東北研究所で久しぶりに再会したの
だとか。それで、俺は優とは家族ぐるみで付き合うようになってしまった。

 かといって、そこに恋愛感情はお互いになかった。俺は姉さんと遠距離だけど付き合っ
ていたし、多分、優は石井会長のことを引きずっていたのだろうから。それでもお互いに、
同じ社宅で行き来するようになると、必然的に学校でも一緒に過ごす時間が増えていた。
俺にはこの地には彼女はいないし、優も同じだったから、どちらかに恋人ができて疎遠に
なるという流れにはならなかったのだ。

 話をするようになると、優は話しやすい相手だった。話を聞く能力がすごく高いし、沈
黙が訪れると自分から話を振ってくれる。何でこんなやつがぼっちだったんだって俺は疑
問に思った。それでも、この北の地の高校にいても彼女は基本的にはぼっちだった。俺と
話す以外に友だちの女の子とか男と話しているのを見かけたことがない。こいつならすぐ
にでもクラスに溶け込めるだろうに何でだろう。

「よう」

「広橋君、おはよう」

「おはよう、二見」

「君もこの電車?」

「だいたいいつもそうだけど」

「まだよくわかってないんだけど、この電車よりもっといい時間の電車ってあるの」

 ここはすごい田舎ってわけじゃなくて、地方の県庁所在地だったから、地下鉄は何本も
ある。

「ああ。遅刻しないなら、あと二三本遅いのでも平気かも。安全を考えるのならこの電車
かな」

「そうなんだ。それで君も?」

「無遅刻無欠勤を狙ってるからね」

 優はそれを聞いて微笑んだ。

「ばかみたい。でも、あたしもこの電車にしよ」

 その結果、必然的に俺と優は、社宅から教室のドアまで毎日二人で登校することになっ
てしまった。姉さんには言えないな。俺はそう思った。


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