446:名無しNIPPER[saga]
2017/05/31(水) 23:20:47.44 ID:Ww3oqi+ko
まあ、東北での再会はそんなふうだった。こいつは、唯のライバルだったんだけど、そ
の暗い表情を見るとそういう言葉はかけられない。
泣きそうな顔。まあ、想像はつく。彼氏だった、生徒会長と離れ離れになったからだろ
う。
「何でおまえ、ここにいるの?」
何となく事情を察していたけど、一応聞いてみた。
「親が転勤したからだけど。広橋君は」
やっぱりか。こいつは唯のライバルだったのかもしれないけど、こいつもまた親の転勤
の犠牲者なのだ。そう思うと、あまり冷たくもできない。
「俺もそう。お前より早いけどな」
「すごい偶然だね」
全く感動のないような声で二見が言った。
「親の仕事との都合つってもさ。嫌になるよな。いきなり知り合いとか全部いなくなっち
ゃって初めからやり直しだもんな」
「別にあたしは」
二見はそう言った。そうか。こいつは、俺がこいつと生徒会長が付き合っていたことを
知らないと思っているんだろう。実際、姉さんから聞くまでは知らなかったのも事実だし、
こいつがそう思ってたとしても不思議はない。
「気持ちはわかるけど元気出せよ。俺だって不安だったけどすぐに友だちとかできたし
さ。まあ、おまえならすぐに友だちもできるって」
「何であたしならできるって思うの。学校でそんなに親しかったっけ? 君と」
少しだけ気の強そうな顔が、表情にではなく口調にあらわれているようだ。
「さあ? よく知らねえけど。お前、知り合いだらけだったし友だちも多かったじゃ
ん。よく相談に乗ってあげる的な友だちとか」
「・・・・・・そうね。でもそれは友だちって言わないよ」
少し不思議そうな声で二見が言った。
確かにそうかもしれない。こいつとは親しいわけじゃないし、クラスだって別々だった。
だけど、こいつの行動の不思議さは何となくだけど俺にも理解できる。なぜなら、こいつ
は不思議なぼっちだと俺は常々考えていたから。
友だちを作ろうと思えば作れるに違いない。現に、彼氏だって作ったわけだし。つまり
そういうポテンシャルを秘めたぼっちなのだと。
468Res/896.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20