42:名無しNIPPER[saga]
2015/12/20(日) 00:09:08.36 ID:aKfQVv85o
胃が痛くなるような有希との不毛な会話から逃れて教室に入ると、二見が俺に話しかけ
てきた。本当に話しかけてくるんだな、こいつ。さっきまで有希との会話にエキサイトし
てしまった俺には、冷静な態度で二見に接することができるのかわからなかった。
「池山君」
「おう」
「おはよう。昨日はありがとね」
目の前で、二見が微笑んでいる。
「おはよう」
辛うじてあいさつを返した俺は、二見の姿を盗み見るように眺めた。やっぱりこいつ、
可愛いな。特にいつも無愛想なので今日みたいに微笑むと特に。
「池山君、大丈夫?」
二見が不思議なことを聞いてきた。
「大丈夫って何が」
「何か一日の始まりから消耗してるって感じ」
少しだけ複雑そうな笑みを浮かべて、二見は言った。何なんだいったい。
「ああ。ちょっと登校中にいろいろ会ってね」
「遠山さんと喧嘩でもした?」
「いや、そんなじゃねえけど」
遠山さん。と、こいつがそう言った相手は有希のことだ。こんなことで違和感を感じる
理由はないのだけれど、俺にとっては有希は有希だったので、最初は二見が何を言ってい
るのかわからなかった。
「何であたしなんかがそんなこと知ってるんだよって、今考えたでしょ」
「いや。でも何でそう思ったの?」
「あたし、ぼっちだからさ」
「え?」
普通は触れられたくないだろう事実を、二見はさらっと言ってのけた。さすがに何て答
えていいのかわからない。
「普段学校でやることないし、自然とみんなのこと観察するようになっちゃってね」
二見はさらっと話を続けた。しかし、こいつ本当にみんなが噂しているようなコミュ障
なんだろうか。会話をしている限りではとてもそうは思えない。
「ぼっちって・・・・・。おまえって自分から一人を選んでる感じだけどな。何というか周囲
を遠ざけているっていうかさ」
初対面に近い俺なんかとこれだけ話せるならば、こいつがその気になれば友だちなんか
いくらでもできるだろうに。しかも容姿だってこんなに可愛いんだし。
「あたしのことはいいの。それよか遠山さんって君のことが好きなんだね」
「何言ってるの、おまえ」
「友達がいないっていいこともあってさ、人間関係がフラットに見えるって言うか」
「はあ?」
本気でこいつが何を言いたいのかわからない。
「要は中立的な立場で観察するとわかることもあるってこと」
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