362:名無しNIPPER[saga]
2016/09/05(月) 22:47:09.63 ID:WlGCXGIKo
ここまでの話だけでも混乱していた私は、この話に加えて会長が何を言いたいのか予想
も出来なかった。そしてそんな私を気遣う余裕すらないように、普段は常に冷静な会長は
話を続けた。
「誓って言うけど僕がしたのは最初のメールを出したところまでなんだ。その後の名前バ
レとか裏サイトの掲示板とかの書き込みには僕は一切関与していないんだよ」
二見さんを本当に追い詰めたのは学校側に女神行為が知られたことではなく、広くネッ
ト上にその行為が実名付きで出回ったことだった。会長の話が本当だとすると、他に二見
さんを追い詰めた犯人がいるということになる。
私は夕也と浅井先輩の会話を思い出した。やはり彼らが真犯人なのだろうか。まだ真実
はわからないけれど思っていたより複雑な動機が絡み合って、こういう事態が生じたこと
は間違いがないようだった。そして会長は真の犯人ではないのだろうけれども、これを始
めた犯人の動機に密接に関与しているのだろうか。
「浅井君と唯さんが姉妹だったっていうことは、僕はさっき初めて聞いたのだけど」
会長が顔を上げた。「これまでそのことを僕が知らなかったこと自体が不自然だと思
う」
会長は何を言っているのだろうか。私は会長の次の言葉を待った。
「僕は中学の頃それなりに女の子から告白されたことがあるんだけど」
会長は続けた。「まあ信じてもらえないかもしれないけど」
こんな時なのにわざわざそういう余計な一言を付け加えたのがいかにも女性関係に自信
が無さそうな会長らしかったけど、そのことに可笑しさを感じる余裕はこの時の私にはな
かった。
「それにもてたと言ってもほとんどみんな勘違いとか思い込みでね。僕が相談に乗っている
相手が自分に親身になっている僕のことが気になるようになったとうだけで、まあ、そういう
子はみんな自分が好きなんだよね」
「はあ」
会長の話がどこに繋がっていくのか私にはわからなかった。
「そんな中でも唯さんだけはそうじゃなかった・・・・・・生徒会で副会長をしていた彼女は控
え目で優しい子だったんだけど、どうやら本気で僕のことを好きになってくれたみたいだ
った」
「その唯さんの告白を、当時優と付き合っていた僕が断ったのは今話したとおりだけど、
よくわからないのは、唯さんは優と同じクラスだったから僕が彼女さんと付き合っている
ことは知っていたはずなんだ」
「じゃあ、同級生の彼氏を奪おうとしたってことですか? その控え目で優しいという浅
井先輩の妹が」
「そうなるんだ。当時の僕は優に夢中だったから深くは考えなかったのだけど、今にして
思えば同級生の彼氏にわざわざ告白したことになるんだよ。そんかおとをするような子に
は思えないんだけど」
しかし、会長の思考能力はすごく高いなと私は考えた。今の今まで何年間も忘れていた
ことや知らなかったことを、祐子ちゃんから聞かされただけで、すぐに当時の出来事の矛
盾点を思いついたのだから。
こういう人が味方になってくれると力強いだろうな。現にさっき私たちでは宥められな
かった三年生の部長たちを納得させてしまったのも会長だった。
でも、会長が本当に味方になれる立場にいるかどうかはまだわからない。とにかく二見
さんの女神行為を鈴木先生に言いつけて、麻人と二見さんの誰にも迷惑をかけていない二
人だけの小さな幸せを壊すきっかけをつくったのは会長であることに間違いないのだから。
468Res/896.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20