356:名無しNIPPER[saga]
2016/09/05(月) 22:43:35.21 ID:WlGCXGIKo
石井会長はようやく視線を祐子ちゃんから外して、私の方を見た。
「・・・・・・遠山さん、ちょっと学園祭の運営のことで打ち合わせしたいんだけど」
「はい」
「じゃあ、お茶を入れますね。それから打ち合わせしましょう」
祐子ちゃんが言ったけど、会長はそれを遮った。「いや。君はもう一度新しいスケジ
ュールを見直してくれるかな。次の失敗は許されないから」
「はーい」
祐子ちゃんは噂話を続けるのを諦めたようで素直にパソコンに向った。彼女も多少は自分
の失敗を気にはしていたのだろう。
「ちょっと場所を変えようか」
石井会長が私に言った。
会長は黙って私を共通棟の屋上に連れて行った。まるでまた会長に告白されるみたいな
雰囲気だなって私は考えたけど、もちろんそんな話であるわけはなかった。でも黙りこく
って先を歩いていく会長の背中からは緊張感がひしひしと伝わってきた。
・・・・・・本当は会長の問題にかまけている時間はないのだ。私は考えた。会長と副会長、
それに副会長の妹らしい唯とかいう女の子の間にどんな複雑な事情があろうとも、申し訳
ないけど今の私には関係のない話だった。今の私にとっての優先事項は、夕也と浅井副会
長と、麻人と二見さんの関係を知ることだったのだ。
それでも、会長の話には何だか私抱えていた問題の核心をついてくれるような気がした。
とりあえず会長の話を聞こう。私は黙って会長について行った。
会長は屋上のベンチに腰かけた。彼が何も言わなかったので、私は少し迷ったけれど結
局、会長の隣に腰かけた。
「祐子さんの話ではよくわからなかったんだけど」
会長は私の方を見ずじっと前を見詰めたまま言った。
「結局、何で今日副会長はいないかったの?」
そう言えばさっきの祐子ちゃんは、生徒会室で起きた唯さんとかいう女の子の行動だけ
を面白そうに会長に伝えただけだったので、何で副会長先輩がいないのかという会長の疑
問はもっともだった。ただ、最近あまり生徒会に顔を出さない会長がそういう権利がある
のかというのは別として。
「唯さん・・・・・・、浅井先輩の妹みたいですけど」
「うん」
「昨日貧血で倒れたそうです。それで昨日と今日浅井は副会長は生徒会に来れないそうで
す」
「そうか」
それだけ言って会長は黙ってしまった。でもわざわざ私をこんなところに連れてきたの
には理由があるはずだった。浅井先輩不在の訳を聞きたいだけなら場所を帰る必要はない。
私は黙って会長が話し出すのを待った。
随分長く沈黙が続いたような気がしたけど、やがて会長は口を開いた。
「さっきの祐子さんの話だけど」
「はい」
会長の表情は照れているのか何かを恐れているのかはわからないけど、とても複雑な表
情で私を見た。学園祭の運営の相談ではないことはもう明らかだったけど、単純に麻衣ち
ゃんと付き合っていることを私に話したいだけでもないことも確かだった。それは会長の
緊張した様子からもわかった。
468Res/896.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20