33:名無しNIPPER[saga]
2015/12/16(水) 00:27:40.51 ID:OtBfvlRMo
「今日は先輩いないね」
翌朝、自宅の最寄り駅で麻衣が俺に言った。麻衣の言う先輩が二見のことをさしている
ことは明白だ。
「そうだな」
「・・・・・・残念そうだね。お兄ちゃん」
こいつが気軽にこういう風に話すときは実はあんまり気にしてないんだよ
な。俺はそう思った。こいつが本当に気にしているときは、泣くか黙っちゃうかだし。
昨日こいつの手を握ったのがよかったのか。
「ほら電車来ちゃったよ。お兄ちゃん早く」イ
「だからいつも言ってるけど、いきなり手を引っ張るなよ」
手を握る以外でも、昨日あれだけ妹にサービスしてやったのだから、麻衣の機嫌がいい
のは当然だ。
『肉じゃが美味しい?』
『すごく美味しいよ、ほらおまえも』
『な、何やってるのよ!?』
『おまえに食べさせようとしているんだけど』
『お兄ちゃんの変態!』
『結局食ってるじゃねえか』
『うるさい!』
それにしても。いつも駅のベンチでスマホ弄ってる二見は、なぜ今日はいないのだろう
か。どうでもいい話だけど、何だか少しあいつのことが気になる。
「お兄ちゃん」
「おう」
「今、あの先輩のことを考えてたでしょ」
おまえはテレパスかよ。
「考えてねえよ」
「嘘だね」
「だから誤解だって」
そのとき、有希が救世主になってくれた。
「おはよ麻衣ちゃん」
隣の駅から電車に乗り込んできた有希が元気にあいさつした。
「よう麻人」
夕也だ。やっぱりこいつも有希と一緒か。妹の嫉妬とは別な意味で俺は気分が沈んでい
くのを感じた。
「あ、お姉ちゃん」
「何か元気ないじゃん」
有希が俺たちを眺めて言った。
「そうなんだよ」
「あんたじゃないよ。麻衣ちゃんのこと」
有希が一言で俺を切り捨てた。夕也がおかしそうな表情をした。
「麻衣ちゃん何か悩み事でもある?」
妹は黙って有希の顔を見上げた。何となくだけど、泣きそうな表情のような気がする。
「そうか」
有希が怖い顔で俺の方を見た。
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