女神
1- 20
325:名無しNIPPER[saga]
2016/07/31(日) 23:38:41.30 ID:rPhbjypgo

 麻衣ちゃんには日ごろから本当に頼れることができる相手としては、麻人しかいない。
前からそう思っていたのだけど、いつも二人で登校している一年間の間で、私はそのこと
を忘れ、麻人からの好意や行動を期待するようになっていたのだ。それが、再び麻衣ちゃ
んと登校するようになると、その気持ちが深刻なまでに私の胸中によみがえったのだ。何
で、麻衣ちゃんの気持ちを踏みにじるようなことを考えられたのだろう。私は昨年度まで
の自分の気持ちを不思議に思った。

 そういうわけで、一時期盛り上がった自分の恋愛感情は、再び自分の中で抑制されるこ
ととなった。ただ、以前とは違って今度は登校する仲間の一人に、夕也が加わっていた。

 お隣さんになり一緒に登校するようになるまで、私はあまり詳しく彼のことを知らなか
ったけど、それでも夕也が女の子たちから注目されていることや、学業やスポーツの成績
がすごくいいことくらいは知っていた。それから、四人で朝登校するようになると、彼は
あまりそういうことをひけからさない性格であることもわかった。つまり、スクールカー
ストにおいて上位の位置を占めている夕也は、それにもかかわらずすごく話しやすいいい
やつだったのだ。

 彼が私に対する明確な好意を示していたわけではない。むしろ、四人で登校しだしたこ
ろ、私は電車の中で、果敢に夕也に話しかけようとする女の子たちに驚いているばかりだ
った。本当に、こいつってもてるんだ。

 その夕也は、その子たちをまじめに相手するわけでもなく、また、私を口説くでもなく、
麻人相手に馬鹿話をしているだけで満足なようだった。女の子たちへのあしらいかたはさ
すがというべきか、如才のないものではあったけど。そして、麻衣ちゃんはそんな夕也の
ことをあまり気にすることがないように見えた。むしろ、久しぶりに朝一緒に登校するこ
とになった自分のお兄ちゃんへの心の傾斜を制御しようともしなかった。あの夕也が、麻
衣ちゃんに親し気に話しかけてもほとんどガン無視されている状態なのだ。

 そういうわけで、麻人を独り占めしている麻衣ちゃんと、自分の妹にかまってばかりで
他に何もする余裕もなさそうな麻人から放り出されていた私と夕也は、自然と二人で話を
するようになった。必要に迫られてだけど。そんな日々が続くと、さすがに同じ学校の目
撃者がわいてきて、私と夕也の関係を面白半分に聞いてくる子も出始めた。以前の、私と
麻人の関係に変わって、今では校内一と目されていた夕也と私の関係がうわさとなり、実
際にその関係を詮索する同級生たちが増えてきていた。

 その噂は事実無根のものだった。麻人と私の関係がうわさになった時と全く同じように。
それでも、麻人と私の仲のうわさは、それが事実ではないにもかかわらず私の心をくすぐ
り、私はその噂が嬉しかったのだ。でも、いくらイケメンでも成績優秀でもスポーツ万能
でも、夕也とのうわさはうっとおしいだけだった。それは、夕也の方も同じだったろう。
何となく私は麻衣ちゃんに麻人を奪われたような感覚を感じた。麻人との関係で麻衣ちゃ
んを泣かせまいと考えていたにもかかわらず。

 それに、すごく傲岸な考え方だったけど、私は麻人に求められていると感じていた。彼
の視線や、麻衣ちゃんの話を時おり放心したように聞き流して、私の方を見つめる視線。
さらに言えば、私と夕也が気安く話しあったりしている様子を、じっと眺める麻人の視線
から、私は麻人に愛され求められているのだろうと確信していたのだ。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
468Res/896.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice