女神
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324:名無しNIPPER[saga]
2016/07/31(日) 23:38:08.84 ID:rPhbjypgo

 私はその頃は夕也とはたいして親しい仲ではなかった。一年の頃はクラスも違っていた
し、麻人の親友ということで顔見知りではあったけど、別に二人で親しく話したこともな
い。二年になり、私は麻人と夕也と同じクラスになったけど、それでも夕也とはそんなに
親しい間柄ではなかった。

 私が引っ越して、トラックの中から家財が新しい家に搬入されるのを眺めていたとき、
不意に私は誰かに名前を呼ばれた。

「遠山? おまえ何でここにいるの」

 私に話しかけたのは夕也だった。

「あ、広橋君。君こそ何で」

「何でって・・・・・・。俺の家、そこだから」

 彼は私の新しい家の隣の家を指さした。

「え。君ってここに住んでるの」

「うん。おまえは・・・・・・って、引っ越し?」

「そう。ここの家に」

「マジかよ。お隣さんになるのか」

「何でちょっと嫌そうなのよ」

「嫌って、別に」

「別に、何よ」

「まあ、よろしくな。お隣さん」

 夕也はそう言って笑って、あとはもう私にかまわず隣の家に入ってしまった。

 こうなると、私たちが一緒に登校するのは当たり前のようになってしまった。私と夕也
はお隣さんだ。別に時間を合わせたわけではないに、私が家を出ると偶然に夕也も隣の家
から出てきたところだった。夕也は麻人の親友だったし、結果的にそれからは麻人と麻衣
ちゃん、私と夕也は一緒に登校するようになった。

 そのことに対して、麻衣ちゃんや麻人が不満の意を表明したことは一度だってなかった
し、むしろ麻衣ちゃんは私の彼氏候補として夕也を認定していたようだった。

「夕也さんって格好いいよね」

 ある朝、麻衣ちゃんが私に言った。

「お姉ちゃん、あたしのクラスの子が広橋先輩って格好いいって言ってたよ」

 あんたに言われたくないよ。私はそう思った。麻人の関心を一手に受けている私の大切
な妹のあなたからは。

それでも以前のように麻衣ちゃんが私たちの登校の仲間に再び加わると、私は麻人と二
人きりで登校していた頃のように彼の気持ちを知りたいとか、思い切って彼に告りたいと
か、そういう願望を抑えるようになった。それは意図してではなく自然な心の動きだった。


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