女神
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246:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:55:06.69 ID:my8qAWPQo

「そんなこと聞いてないじゃない」

 突然麻衣が初めて感情を露わにして言った。「二見さんとかお兄ちゃんのことなんか今
は聞いていないでしょ」

 麻衣は僕の方を真っすぐに見た。

「先輩が今でもあたしのことを・・・・・・その、好きかどうか聞いてるんじゃない」

「・・・・・・本当に僕なんかでいいの?」

 僕はもう自分自身を誤魔化すことを諦めた。振られて傷付くなら一度でも二度でも一緒
だ。僕は心を決めた。一度振られたつもりになっていた僕だけど、ここまで言われたらも
う一度ピエロになろう。その結果、麻衣に利用されただけだとしてもそれはもはや今の僕
には本望だった。

「今でも僕は君のことが大好きだけど・・・・・・」

 その時、麻衣の冷静な表情が崩れ彼女は静かに目に涙を浮かべた。

「先輩って本当に鈍いんだね。あたし、手を握ったりキスしたり一生懸命先輩にアピール
してたのに」

「その・・・・・・ごめん」

 僕は何を言っていいのかわからなくなっていたけど、期待もしていなかった麻衣の好意
への予感は急速に胸に満ち始めていた。

「女の子にあそこまでさせておいて、何も反応しないって何でよ? 先輩って今までいつ
も女の子にこんなことさせてたの?」

 麻衣は涙を浮かべたままだったけど、ようやくいつものとおりの悪戯っぽい表情になっ
た。

「そんなことはないよ。だいたい僕はこれまで女の子にもてたことなんかないし」

「嘘ついちゃだめ」

 麻衣は見透かしたような微笑を浮かべた。

「先輩、中学時代にすごくもてたって。先輩と同じ中学の子に聞いちゃった」

 それは陽性転移だ。でもこの場でその言葉を口に出す気はなかった。麻衣がかつて僕が
女の子に人気があったと思い込んでくれているのなら、何もそれを否定する必要はない。

「あと浅井先輩って、絶対先輩のこと狙ってると思う。この間だって浅井先輩、あたしに
嫉妬してたよね」

「それはない」

 僕は即答した。少なくともそれだけは麻衣の勘違いだった。

 麻衣が話を終えたせいで、またしばらく僕たちは沈黙した。

 やがて麻衣が再び僕に言った。

「先輩、あたしはっきり返事聞いてない」

「君のことが好きだよ。僕なんかでよければ付き合ってほしい」

 僕はもう迷わなかった。例えこれは自分の破滅に至る道だったとしても後悔はしない。

「・・・・・・・うん。これでやっと先輩の彼女なれた」

 僕は思わず麻衣の手を握った。

「ありがとう」僕はようやくそれだけ低い声で口に出すことができた。麻衣も僕の手を握
り返してくれた。

「ありがとうって、何か変なの」


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