241:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:52:24.99 ID:my8qAWPQo
その夜、麻衣にキスされた興奮と、もう引き返せないところまで踏み込んでしまったと
いうストレスとが僕の中でごちゃごちゃに交じり合っていて、僕にはその感情を制御する
ことができず結局捨てアドの作成すら手がつかない有様だった。
僕は答えの出ないことはわかっている疑問について考え込んだ。一つは麻衣が今僕のこ
とをどう考えているのかということ。僕は臨時のお兄ちゃんとして、池山君と遠山さんに
代わって麻衣を守っているつもりだった。最初は優のことが気になって麻衣に接近したの
だけど、麻衣に惹かれるようになってからは、僕は麻衣の願いをかなえてあげることに目
的を変更した。そして傷付くことを恐れた僕は自分の行為に対して何も見返りを求めては
いけないと自分に言い聞かせてきた。僕なんかと麻衣がカップルとして釣り合わないこと
は自分が一番よく知っていたから。それに一番最初に麻衣のことが気になると白状した僕
に対して彼女は、誰とも付き合う気がないと正直に話したことだし。
その後、麻衣が人目を気にする様子もなく僕の手を握ってたり、寄り添って歩いたり、
更には頬にキスしてくれたりしても僕は勘違いはしなかった。
でも、昼休みに麻衣は僕にキスした。唇と唇が触れ合った瞬間には何も考えられなかっ
たけど、こうして少し間をおいてそのことの意味を考えると、今まで自分に対して禁止し
ていた麻衣の好意への期待がどうしても浮かんできてしまった。もしかしたらこれまでの
一連の付き合いを通じて麻衣が僕に愛情的な意味での感情を抱いてくれるようになったと
したら。
これは考えても結論の出ることではなかったけど、それでも僕は麻衣の気持ちを推し図
ることを止められなかったのだ。そして、しばらくしてこうした無益な思考からようやく
抜け出た瞬間、僕は自分がしようとしていることを思い出し、今度は得体の知れない恐怖
心や不安感を感じ出した。
泣き出しそうな顔で俯いていた麻衣の姿を見下ろした時、僕はそのことが自分にもたら
すリスクは承知のうえではっきりと決断したはずだった。でも、あらためて自分がしよう
としている行為が優や、場合によっては池山君の人生に及ぼす影響と、そしてそれを仕掛
けたのが僕であるということが、本人たちや世間に知られた時に僕が失うかもしれないも
のの大きさを考え出すと、やはり今でも僕は体が震えだすほど怖かったのだ。
麻衣の好意への予感と、麻衣に好意を抱かれるおおもととなったであろう、僕が仕掛け
ようとしている行動への恐怖。僕は何度もそれらを天秤にかけてみた。昨日までならまだ
引き返せたかもしれなかった。こんなにも麻衣を求めている僕だったけど、その僕の恋情
さえ諦めさせるほどの恐怖が僕を襲っていたのだから。でももはや手遅れだった。昨日ま
でなら止められたかも知れなかったことも、今日の麻衣のキスによって、もはや引き返せ
ないところまで連れて来られてしまったみたいだった。
僕を怖気づかせまいと、麻衣が計算して僕にキスしたとしたら、彼女は恐ろしい女だっ
た。でもそれは考えられなかった。優と池山君が付き合出したことを知り、泣きそうにな
るほど動揺した彼女にそんな複雑な行動を取れたはずがない。そして何より、麻衣は甘や
かされて育った自己中心的な思考の持ち主だったけど、それでも決して他人を顧みない思
考過程や行動しか取れない子ではなかった。
多分、池山君と遠山さんは麻衣を甘やかしつつも、根本的な部分では彼女に正しく接し
たのだろう。基本的には芯がしっかりした子だったせいか、どんなに甘やかされても大切
にされても、麻衣はスポイルされなかったのだ。その証拠に彼女は自分の池山君への気持
ちを抑えて、池山君と遠山さんの仲を応援している。そして、優の女神行為さえなければ、
彼女は優と池山君との仲だって応援していたかもしれなかった。
結局その夜は何も手がつかないまま、僕はいつの間にか寝てしまったようだった。結構
冷え込んだ夜だったけど、興奮状態の僕は布団に入らずベッドに仰向けになったままいつ
の間にか重苦しい眠りに引き込まれていたのだった。
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