178:名無しNIPPER[saga]
2016/03/27(日) 22:42:56.44 ID:q8J8eS9oo
僕は狼狽した。優の僕への無関心とか副会長への冷淡な態度とか、いろいろ僕が抱いて
いた不満なんか、彼女の涙を見た瞬間にどうでもよくなってしまって、このまま彼女に振
られたくないという焦りだけが僕の脳裏を占めていった。
「ちょっと待ってよ。君の話を聞くのが嫌になったなんて、君の誤解だよ」
僕は冷静に言おうと努めたけれど、僕の声は僕の意図を裏切って振るえ、そしてかすれ
ていたから彼女には聞き取りにくかったに違いない。「め、迷惑なんてそんなことは一度
も思ったことないよ」
優はまだ涙を浮かべたままで、何も言わずに僕の方を見返した。まだ、彼女を説得する
チャンスはあるのかもしれない。僕は必死になって続けた。
「僕は君が好きだし、君のことをよくもっと知りたい。だから、君の話をもっと聞きたい。
だから、君が素直に自分のことを話してくれてすごく嬉しかったんだ」
優はまだ沈黙していたけれど、その表情には柔らかさが戻って来たように感じられた。
「今、ちょっと他のことを考えちゃったのは悪かった。副会長を傷つけたかもしれないっ
て思ったんだけど、だからと言って君の話がどうでもいいなんてことはないよ」
「・・・・・・本当?」
ようやく優が小さい声で言った。
「本当だって。だから、僕に迷惑とか僕をもう困らせないとか言わないでよ。副会長のこ
とだって、僕は彼女と付き合う気なんてないんだし」
僕は早口で続けた。もう、なりふり構ってはいられなかった。「僕は君が好きなんだ。
これまでどおり、僕と付き合ってほしい」
優はようやく納得したようだった。それで、彼女は僕の方を上目遣いに見つめて言った
のだった。
「変なこと言ってごめんね、先輩。あたしの誤解だったね。あたしのこと、許してくれ
る?」
僕はほっとした。これで優との付き合いを続けることができる。
「もちろん。僕の方こそ誤解されるような行動してごめん」
優は、僕の手を握った。
「あたし、先輩のことが好き。あなたとお別れしなくてすんで本当によかった」
優が僕にはっきりと好きと言ってくれたのは、彼女と付き合ってから初めてのことだっ
た。
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