女神
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172:名無しNIPPER[saga]
2016/03/27(日) 22:38:12.02 ID:q8J8eS9oo

「変じゃないよ。僕は、生徒会とかの役員でもないし、運動部のキャプテンでもないけ
ど」

 僕はむきになって話し続けた。

「それでも、こう見えても僕は人気があるんだよ」

「先輩、女の子にもてるそうですね。今までいっぱい告白されたのに、先輩は誰とも付き
合わないみたいって、クラスの子が言ってました」

 そう語った二見さんの可愛らしい笑顔。

「コンサルタントは、一人の女の子に縛られちゃいけないし、そもそもクライアントに恋
するなんて、コンサルタントの資格はないよ」

 僕は胸を張って言った。目の前の可愛い女の子に、もてると言われるのは正直気分が
かった。

「先輩って、そうやって人の悩みを聞いてあげて、自分には何の得があるの?」

 二見さんが、続けて聞いてきた。これまでよりくだけた口調だった。

「得って・・・・・・」

「無償奉仕のボランティアなんですか?」

 からかうような彼女の言葉を聞いて、僕は少しむっとして答えた。

「人を救うと、いい気持ちになれるよ」

「そして、みんなから誉められ信頼されるってこと?」

「まあ、そうだね」

 僕のことを嫌っていたやつらが、僕のことを攻撃してきた時、僕に心酔する不良やク
ラス委員の女の子が守ってくれた話をした。

「すごいなあ。みんな先輩のことが好きなんですね」

「・・・・・・好きかどうかはわからないけど、話を聞いてあげたやつらからは信頼されてると
思ってるよ」

 僕はこの時、ふと気がついた。

 僕は、二見さんの質問に誘導され、これまで人に話したことのなかった僕の秘密を、得
意気に、気分よくぺらぺらと喋っていたのだった。

 いや、僕は彼女に喋らされていたのだ。

 僕は、ようやく、そこで気がついたのだった。今まで、自分が人に仕掛けてきたことを、
僕は二見さんによって身をもって体験させられたのだった。

 さっきまで、僕は彼女に自分語りをさせることに成功したと思っていた。

 でも、実際は彼女は全て理解した上で、僕を惹きつけるための最小限の自分語りを意識
的にしていたに過ぎなかったのだ。そして、その後、彼女は今度は彼女の持つ傾聴能力を
僕に向けて、仕返しとばかりに発してきたのだった。

 つまり、いつの間にか僕は、彼女にコンサルティングされていたのだった。

「・・・・・・もう、やめようぜ」

 最後の最後に彼女の意図に気がついた僕は、辛うじて彼女の意中の策から抜け出すこ
とができた。

「お互い、化かしあっててもしょうがないでしょ」

 二見さんは、一瞬驚いた表情を見せたけど、それが本当に驚いたのか計算どおりに驚い
て見せたのかは、僕にはよくわからなかった。

「・・・・・・何だ。わかっていたんですね」
 彼女も笑った。

「勝手にコンサルされて悔しかったから、お返しに、あたしも先輩に試してみたんですけ
ど」

「さすがに、先輩には通用しないか」
 二見さんは残念そうに笑って言った。

 ・・・・・・これが、二見さん、いや、その後、彼女のことは呼び捨てにするようになったの
で、彼女のことは優と呼ぶけど、その優と僕が親しくなった日の出来事だった。


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