末妹「赤いバラの花が一輪ほしいわ、お父さん」(最終章と後日譚)
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84: ◆54DIlPdu2E[saga]
2016/02/12(金) 01:27:43.13 ID:UiQ0p+yt0
師匠「儂は『この男』を、そんな立場に立たされる前から知っているが」

師匠「…………彼の人生は彼の思い描いた通りに行かなかった」

師匠「おそらくは、『彼女』も」

次兄(……そうか、このきらびやかな衣装の美形王族カップルが漂わせる暗さは……)

師匠「だからってなあ、国を、民を、我が子を」

師匠「全てを王の名の元に自分の思い通りにしてやろうとはなあ、許された所業ではないぞ、わかっておるのか?」コンコン

次兄「お、おっさん、絵を杖で叩いたら絵具が剥がれるし」アタフタ

師匠「……この男とは少年の頃、机を並べて共に学んだこともあってな」

師匠「ま、それはどうでもいい」

師匠「この画家は間違いなく腕が良かった、天才と言っても良い」

師匠「……しかし既に名声が拡がっていたとは言え若くもあったのだ、思いがけず、彼らの複雑な心境まで筆に込めてしまった」

師匠「王と王妃自身が気付いていたかは今となってはわからんが」

師匠「……彼らの子である王子は、間違いなく敏感にそれを感じ取ったのは間違いない」

菫花「…………」

師匠「そして、赤の他人であるにもかかわらず」

師匠「芸術的センス、若さゆえの感受性の強さ、野獣への想い、他にもあるかもな」

師匠「あらゆる要因が、この絵に向かい合った君達兄妹に涙を流させた」

師匠「……正直、君達がここまでの反応を見せるとは予想外で」

師匠「まだ幼く柔らかな心が傷付いたとすれば、すまないことをしたと儂は思う」

(野獣「……」)

末妹「……(お兄ちゃん)」チラ

次兄「……(うん)」コクリ

末妹「いいえ、師匠様」

末妹「兄も私も、この部屋に入った事を後悔してはいません」

末妹「私の場合は、最初に胸がとても痛く、苦しくなりましたが、その後は次第に落ち着いて」

末妹「……それから、今度は同じ場所がほんのりと……暖かくなったのです」

末妹「野獣様が夢の中で、ご自分の欠片を、泣き続ける私に分けてくださった直後のように」

(野獣「!」)
 


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