41: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/08/29(土) 20:37:29.83 ID:tNq3pxyB0
背の翼を広げた瞬間、まるで空気抵抗を感じさせないように、デーモンは空へと飛び去ってしまった。
それを確認し、女性が掲げた手を振り下ろすと、
雷雲から、また雨のような稲妻が降り注いだ。
それは実に、数秒もの間。
刹那の時間で多くの魔物を殲滅したのだ。
先ほどとは比べ物にならない。
だが、閃光が晴れ、視界が蘇った時、
そこにデーモンの姿は、なかった。
勇者「………ちぇ。
逃しちゃった。
あー、また怒られちゃうな」
兵長「死体を探せ!
残党を始末しろ!!」
勇者と名乗った女性は、ひとつため息をつくと、
こちらに向かって歩いてきた。
遠目にはわかりづらかったが、
近くで見ると、思いの外顔立ちに幼さが残る。
眼光は依然として怜悧なままだが、
背は低く、たおやかな腕は、とてもデーモンと打ち合い、
雷を生み出せるようには思えない。
勇者「この町の衛兵は練度が高いね。
…君は、戦士くんかな?」
戦士「………あ、ああ。なぜ俺の名前を?」
勇者「有名だよ。
辺境に住む勇壮なる斧槍使い。
中央王国駐留軍の誰もが一撃で打ち倒されたと」
戦士「…あんなもん、暇潰しだ。
魔物を狩れなければ意味がない」
勇者「謙遜しないでよー。
ところでさぁ……」
戦士「なんだ?」
勇者「あいつ、なんか言ってたじゃん。
極上の魔力がどうとかって」
戦士「……………」
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