312: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/10/22(木) 01:20:08.92 ID:GXsKHRI30
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戦士「盗賊!?」
声がしたその時、
機を伺っていたのであろう、勇者の背後に現れた壮年の男が、
勇者に向け、桶に汲んだ水を浴びせた。
投げつけられた桶如き、勇者の身体能力をもってすれば、
容易く避けられるものだが、
しかし声に虚を突かれた勇者は身を固めてしまい、
全身に水を浴びる事を、完全に許してしまっていた。
盗賊「…お許しを」
盗賊は手に、
内反りに湾曲した、大振りなナイフを構えている。
それは決然とした戦闘態勢だ。
盗賊の装束は街着のままだが、
その姿こそが市井に潜む無頼の男の真の姿なのだろう。
勇者「………君まで、裏切るの?」
盗賊「そのつもりはありません。
…しかし、あなたの行動を諌める事も、
私の賜った役目かと」
勇者「そんな事頼んでないよ。
君に、その資格があるとでも?」
勇者は身体を戦士に向けたまま盗賊と話をする。
顔は伏せられ表情は読めないが、
その双眸に宿った暗い輝きを、声色から容易に知ることができた。
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