271: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/10/05(月) 03:25:57.98 ID:D2uU4S3W0
倒れ伏す執行部隊の青年。
眩んだ視界は数秒で回復した。
盗賊という男は、自らでは戦う意義を見出さない。
なればこそ命までは奪わぬが、
捨て置ける相手という訳でもない。
盗賊「すまないが。
足くらいは、折らせてもらったよ」
気絶した見習の頭に手を当てる。
生きてきた中で必要に迫られ会得しただけの、
盗賊の持つ唯一の魔法だ。
盗賊「………。
何故?
本部に、おられるのでは……」
読心術。
精度は低く、対象者の情動如何で映像は程良く乱れるが、
対象者の心も同時に読めるため、
それが都合が良い事もあった。
…見習の記憶の中で、
悪鬼の如く魔法使いたちを切り伏せる女性。
青い鎧を身にまとい、
白銀の髪をなびかせ、
ルーン文字の刻まれた刀身の短い剣を振るうその姿。
盗賊とて勇者の全てを知るはずはない。
例えば。
勇者ほどの逸脱した戦闘力を持つ存在が、
忠誠心なしに王国の走狗に甘んじている矛盾、であるとか。
盗賊「………これは………。
きっと。
親心、なのか」
近衛騎士団の全滅が勇者の手によるものだとすれば、
ならば勇者の凶行は、
もはや王国に従う理由なし、という事だ。
察しはついている。
未だ18の少女なのだ。
僅か16で王国軍中将の地位を与えられ、
受けるべき時に愛情を受けなかった代償は大きい。
盗賊「つまり、彼女は、もう。
…そうか。
すまない。
言葉が見つからないんだ。
…すまない」
ならば勇者だけでも。
これ以上修羅の道を歩ませぬよう、
引き戻してやらなければならない。
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