226: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/09/19(土) 02:32:55.51 ID:HzNUYnay0
戦士「そんな男がなぜ、嘱託軍人なんてやってんだ」
盗賊「……はは。
理由は簡単です」
伏せていた顔を上げる。
胡散臭い壮年の男の顔ではない。
千の指と称された、
剥き身のナイフのような男がそこにいた。
盗賊「罪滅ぼしですよ」
戦士「…何を言うかと思えば」
盗賊「くく、そう思うでしょう。
しかし、真実なのですよ」
半ば自嘲気味な言葉。
眼窩は落ち窪み、目に暗い影を落とす。
苦悩と後悔と共に生きてきたような。
この顔は、知っている。
…自殺を決意した男の顔だ。
盗賊「私は足に古傷がありましてね。
それが原因で私は速く走れなくなったのです」
戦士「…ほぉ」
盗賊「はは、間抜けなもんです。
慢心が、罠の解除を怠らせた。
靴紐が切れましてね。
転んでしまったのですよ」
戦士「そんなヤツ、パーティーに欲しくないな。
ははは」
盗賊「…そうして、千の指は死んだのです。
足の遅い盗賊などが生きていける場所はない。
私は盗賊ギルドを去り、国を去りました。
自堕落な旅を続ければ仲間もできます。
私は彼らと日々に流されるまま奴隷商となりました」
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