86: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/03(木) 23:48:49.36 ID:gD1asC0l0
「―――」
「……あぁ、もちろん副隊長の指示もいい感じだよ!」
私は、ロミオに何も言えなくなっていた。
感覚の正体を知った今でも、彼の空回りぶりを見る度に胸の内側がざわつく。
だけど、またあの過去を実感するのが、怖い。今の自分を剥ぎ取られるのが、恐ろしい。
結局、私の自衛手段は今まで通り、考えないようにすることだけ。
"ブラッド"の副隊長として、求められた事をこなすしかなかった。
――それは家を飛び出す前と、何が違うんだろう。
「おいロミオ……さっきの任務、なんなんだよ……全然なってねぇ」
気づけば、ギルが怒気を纏わせた口調でロミオに詰め寄っていた。
彼も今までは譲歩してロミオを諭していたはずだけど、明らかに腹を据えかねている。
「あんま固いこと言うなって……頼れる後輩もいることだし、もっとこう、余裕を持ってさー」
「余裕と油断は違うだろ」
しんと静まり返った場の空気に、一筋の亀裂が走る。
今のギルなら、地雷を踏み抜きかねない。
「ギ――」
「……後輩に抜かれまくってやる気がなくなったのか?」
「だったらいっそ、やめちまえよ」
私より先にナナが制止をかけようとしたけど、遅かった。
静寂が、再びこの場を包み込む。
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