66: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/08/26(水) 01:38:21.67 ID:SNn8TeIE0
あの時の様子だと、ナナはその頃の記憶を全て思い出したに違いない。
それが引き金となって、彼女は力の扱い方を知らないまま、"血の力"にまで昇華させてしまった。
ナナが一時期変調をきたしていたのも"血の力"の兆候だったとすれば、
やはりその責任は、"喚起"の"血の力"を持った私にあるだろう――
「……お前、もしかして自分のせいだとか思ってるんじゃないだろうな」
――という思考は、ギルにあっさり読み取られてしまったようだ。
「ナナが前から抱えてたものが原因だってんなら、どの道いつかはそいつと向き合わなきゃならない……俺や、シエルのようにな」
「お前がやったのは、その時期を少しばかり、前倒しにしただけの事だ」
「そうなりゃ俺達のやれることは……アイツがケリつけるまで支えてやって、それが終わったら迎えてやる、それだけだろ」
……そうだ、落ち込んでいる場合じゃない。
「……ふーん、たまにはいいこと言うじゃん」
「ギルの言う通りです、副隊長……ナナさんだって、あなたを責めてはいないはずです」
ナナはきっと、母を死なせ、仲間に迷惑をかけた自分を責めている。
そんな彼女を迎えられるように、ナナが安心して帰れるようにするのが私の……私達の、やるべき事だった。
「フッ……言いたいことを言われてしまったな」
「……では早速、神機使いとしてナナを安心させてやろうか」
いつの間にか戻って来ていたジュリウスの一言で、私達は立ち上がる。
任務に駆け出そうとする中で、ふと、カウンターで料理の仕込みをしているムツミちゃんの姿が目に入る。
彼女もまたナナを迎えるために、"おでんパン"を作ってくれているようだった。
"だから……おでんパン食べるとお母さんを思い出して……凄い幸せな気分になるんだ――"
――ナナの携帯端末宛てにメールを一通送り、私はジュリウス達の後を追いかけた。
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