304: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/03/01(火) 02:49:01.68 ID:t8DmWegLo
それでも、彼女が最後に見せてくれたのは、恥じらいを多分に残した、穏やかな笑顔だった。
その様子が愛らしくて、私も笑みをこぼす。
「うん……これでおあいこ!」
「早く帰ろ、先輩!」
今度こそ赤面を振り切って、エリナが私の左手をつなぐ。
照れ隠しだろうか、足早に駆けるエリナに若干引きずられながら、私は何ということもなく、目線を上げた。
何にも遮られない、どこまでも広がる青空。
塞ぎ込んでいた頃、空は空でしかなかった。
エリナだけじゃない。
こうして今一度、空に意義を見出せるようになったのは、私が手を取り、それに握り返してくれた、みんなのおかげだ。
その想いがある限り、私は前を向ける。
自身と向き合って、想いを知って。
素直な心で、歩み続ける。
未だ落ちない陽は、前髪に留められた、ヘアクリップをも照らしていた。
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