220: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/19(火) 01:38:11.58 ID:Z5yxWWDco
「……死傷者の方たち、は」
ここまで作業を進めながら会話に応じていた榊博士が、その手を止める。
椅子から立ち上がり、私の正面まで来ると、重々しく口を開いた。
「……身元は特定できませんが、しばらくあの地区で滞在していたのは確かなようです」
「勝手ながら、残っていた部位の遺骨は支部内の霊園に埋葬させてもらいました」
「……そう、ですか」
「この件ばかりは……少なくとも君の責任ではない、と言わせてもらいます」
口調を改めたのは、責任者としての言葉、ということだろうか。
きっと、このようなやり取りも、今に始まった事じゃないのだろう。
それだけに、私情に駆られ、何も為し得なかった自分に苛立ちが募る。
……いや、得るものはあった。
それを伝えるためにも、私は榊博士を訪ねたんだ。
「……さて、君への報告はこんなところかな」
一通り言い終わると、博士はまたいつもの口調に戻っていた。
「ここからは私の話になるんだけど……任務中に、ギルバート君と"感応現象"を起こしたそうだね」
「……はい」
「もちろん、その内容について聞くつもりはないよ」
「……私が気になったのは、"再生中の映像が途切れたような感覚だった"という報告があった事でね」
「ギルバート君は流されるままだったと言うし……もしかして、君が打ち切ったのかい?」
「打ち切った、というか……止めるように、強く思ったのは確かです」
「そうか……おっとすまない、珍しい例だったものでね」
こちらに身を乗り出し気味になっていた博士が、体勢を改める。
どうやら、本当に科学者としての興味本位の話らしい。
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