159: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/10/02(金) 01:46:15.86 ID:NGMN6bPho
ラケル博士との会食の時にも聞かされた、ジュリウスの"ブラッド"への想い。
幼くして両親を失った彼にとって、家族という存在は憧れに近いものになっているのだろう。
だから仲間の活動を妨げないために、隊長として私達を影から支えて、自らに課した規範を独りで背負い込もうとして……
だけど、そんなジュリウスの、"ブラッド"の日常は壊されてしまった。
「ごめんなさい……私が、私があの時――」
せめて目の前の者を守れる、強さを持っていれば。
「――自惚れるなよ」
それまで穏やかだったジュリウスが、私の言葉でその雰囲気を一変させる。
「お前がロミオを止められたところで、北の集落の人々はどうなる?お前が俺の代わりにアイツを追いかけたとして、あの戦局を覆せたのか!?」
「あれは起こるべくして起こった!ロミオは神機使いであるがために、人々を守るという本懐を遂げて、逝ってしまった……」
「お前は勿論、目の前にいた俺でさえ、どうしようもなかったんだ……!」
肩を震わせ、怒気を孕んだ表情で私に詰め寄る。
「……だからといって、納得がいかないというのであれば、それは俺も同じだ」
「俺がこうして激情に駆られているのは、犠牲になったのがロミオだったからというだけじゃない……」
「お前も、ナナも、ギルも、シエルも……"ブラッド"が一人でも欠けてしまえば、もう意味がないんだよ……!」
私の襟元を掴みかけていたジュリウスの左手が寸前で止まり、その場で強く握り込まれる。
私は初めて見る彼の必死の様相に、何も答えることが出来なかった。
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