122: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/08(火) 22:30:13.62 ID:FK+Mc0HM0
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――アナグラの自室に入り、結んでいた後ろ髪を解く。
室内に備え付けられた、鏡に映る自分を見やると、随分と髪が伸びたように感じた。
新しい服も仕立ててもらったことだし、たまには違う髪型にでも挑戦してみようかな。
暫し目的を忘れ、新しいヘアスタイルを模索しようとしたところで、指先に何かが当たる。
前髪に留められた、シアンカラーのヘアクリップ。
目を細めながら、手に取った愛おしいそれを眺める。
まだまだ実用には耐えうるものの、表面に浮かんだ細かな傷の数々は、見るだけで嘗ての光景を思い起こさせるようだった。
……あの頃の私は、己の持つ、この力と地位だけが、自身に求められている価値だと信じ込んでいた。
もしくは、そう信じざるを得ないほどに、自分を知る事を恐れていた。
だから、私が"ブラッド"から必要とされなくなる時も、いずれは来てしまうのだろうと。
そんな妄信に縛られた私を、このヘアクリップに込められた想いが解き放ってくれた――
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