107: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/09/04(金) 23:16:24.22 ID:KfQkdvPD0
◇
ラケル博士に招かれたダイニングルームのテーブルには、"アナグラ"では見たこともないような、
しかし私にとっては馴染みのあるような、そんな高級料理が並べられていた。
もちろん、高級であろうとなかろうと、食糧には貴賤なく工場生産のものが用いられているんだけど。
縦長のテーブルに私達2人、しかもラケル博士が向かい側に座っていることもあって、緊張で味はよくわからなかった。
「思えば、あなたとこうしてお話しするのは初めてですね……ジュリウスから近況は聞いているのだけど」
「……ジュリウスね、フライアに戻る度に、"ブラッド"の皆の事を楽しそうに話しているの」
「私が引き取った頃は無口で、あまり笑わない子だったから安心しているわ」
まぁ、そこは意外な話でもなかった。
ジュリウスが"ブラッド"を想っているのと、存外、立ち行った話に踏み込みにくそうにしているのは、彼の今までの言動でわかる。
「ジュリウスは手のかからない子ではあったのだけど、少し心配していたの」
「あの子はきっと……あなた達を本当の家族のように想っているのね」
「……あなたやギルに、"家族"という表現は少し違和感があるかしら」
珍しく、ラケル博士が眉尻を下げた、困ったような笑顔をこちらに向ける。
……家族、兄弟、姉妹。
「いえ……少なくとも、ギルはそう感じてないと思います」
以前の話を反芻しながら、後で彼が機嫌を損ねない範囲で話を合わせる。
ギルとロミオが兄弟なら、私やナナ、シエルはその妹といったところだろうか。
ジュリウスは……何だろう、お父さん?長男?
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