832: ◆A0cfz0tVgA[sage saga]
2017/04/10(月) 01:43:13.85 ID:5wSePt270
無音が一帯を支配している。風の音どころか、生命の息吹さえも感じられない。
これほどまでに緑が生い茂っているというのに、鳥の囀りも、虫の羽音さえも聞こえないのだ。
『緑の砂漠』とも表現できるだろうか。それ程までにこの場所には命の気配が存在しなかった。
自身の乱れた呼吸の音が耳を突き抜け、心臓の鼓動が体を大太鼓のように叩き続けている。
自分が生きているという感触。それがどうしようも無く気持ち悪く、私の心をぞりぞりと削っていく。
この感情は『孤独に対する恐怖』だ。それが私を押し潰そうとしてくる。
心の奥底から湧き出す悪寒。それを抑えようと、身を抱えたくなる。大声で叫びたくなる。
昔、私が過ちを犯してしまった頃に散々感じたそれに、非常によく似ていた。
私はその状況に耐えきれずに立ち上がり、そして行く当ても無いのに足を動かし始める。
その足が向かう先は闇。何処の方角を向こうとも闇しかないので、選択肢など初めから在りはしない。
紅く染まった木漏れ日が地面に残す、血痕のような斑点だけを頼りに前へ前へと進んでいく。
ガサガサという落ち葉の音。パキパキという枯れ枝の音。それらを音楽にして、私は道無き道を歩んでいく。
それからしばらくした頃、私は何やら開けた場所が先にあることに気づいた。
逸る気持ちを抑えつつ、それでも足が早歩きになることは抑えきれずに先を目指す。
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