【艦これ】まるゆ「隊長が鎮守府に着任しました」
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89: ◆UeZ8dRl.OE[saga sage]
2015/08/18(火) 23:03:42.94 ID:3PYHlzHB0
 多少や若干という言葉は往々にして鵜呑みにしていると痛い目を見る。
 色々な場面で使え、程度も幅広く、明らかに当てはまっていないことも少なくはない。
 特に、性格に難ありという言葉に付いていた場合には、要注意である。




「(隊長、アレが今日着任予定の艦娘の方でしょうか)」

「(まず間違いなくそうだろうな、どこからどう見ても不審者だが……)」

 工廠の片隅、明かりも届かぬ物陰で、彼女は工具を黙々と磨いていた。
 その後ろ姿に妖精さんも興味は持つものの、言い知れぬ雰囲気に近付くモノはいなかった。

「(どうしますか、隊長)」

「(放っておくわけにもいかんだろ、話しかけるぞ)」

 人を寄せ付けぬその背中へとゆっくりと歩み寄り、咳払いを一つすると提督は声をかける。 しかし、聞こえていないのか作業する手は止まらない。

「(聞こえていないのでしょうか?)」

「(そう願いたいもんだ)」

 仕方無く前に回り込み、絶対に気付く形でもう一度提督は声をかける。
 そうしてようやく彼女は頭を上げ、手を止めた。

「……何ですか?」

「着任の挨拶ぐらいはしてくれ、形式上ではあってもな」

「隊長、形式って言っちゃっていいんでしょうか……?」

「……明石です、よろしく」

 これで責任は果たしたとでも言うように、工作艦明石は再び工具を磨き始める。
 それを咎めるでもなく、提督はまるゆを連れてその場を去った。
 そして、二人が去って数十分後、明石はようやく手を止める。

(――まずは、ここにある艦装のチェックをしないと)


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