【艦これ】まるゆ「隊長が鎮守府に着任しました」
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138: ◆UeZ8dRl.OE[saga sage]
2017/01/28(土) 00:04:30.73 ID:zDnng6t50
「おはよう、シオイ」

「あっ、おはよー提督。私の部屋の前で何してるの?」

「大したことじゃないんだが、ちょっとお前に話しておきたいことがある」

「何ですか?」

「俺な、小学生ぐらいの頃ちょっとした事件に巻き込まれたんだ。通り魔的なのに母親と買い物中に遭遇してな」

 気が触れた男が、白昼堂々商店街で刃物を振り回すという事件があった。
 新聞にも乗ったその事件の被害者は、通行中の男性一名と女性一名が軽傷、子供と買い物に来ていた主婦が一名子供を庇い重症。
 幸い命を取り止めたものの、その主婦は車椅子での生活を余儀なくされた。

「――元からタフな母親だったし驚く程回復は早かったんだけどな、暫く俺の方が参っちまったよ。急に目の前が真っ暗になって、すっげぇ力で抱き締められて、やっと視界が開けたと思ったら自分の母親も俺も商店街の白いタイルも真っ赤で、今でもその光景だけは鮮明に覚えてる」

「んー……提督は何でその話を私に?」

「今のお前に見えてる世界ってさ、はっきり言って異常だぞ。普通の人間ならいつ発狂しててもおかしくない程に」

「私はおかしい、って言いたいの?」

「……俺から見たお前は、仲間のことを大事に思っている優しい艦娘だ。ただちょっと……普通の艦娘より、少し不安定になってるだけの、な」

 提督の言葉に眉をひそめるシオイ。今も確かに彼女の世界は真っ赤で、提督も真っ赤で、壁も天井も床も――そこで彼女はようやく気付いた。

「てい、とく……?」

「きっと、お前は気付いてる……だが、一度それを自覚したら自分を保てなくなるかもしれないから……仲間に迷惑がかかるから……抑えて、るんだ」

 赤い、赤い、赤い、赤い。
 真っ赤な世界で分からないはずなのに、彼女は“それ”が赤いと知覚する。

「イクの時も……明石の時も……お前が、一番……最初に手を、差し伸べたよな……?」

 怖い、怖い、怖い、何が怖い。
 分かりたくないけれど、シオイは完全に認識する。

「提督……赤いよ?」

「あぁ……お前にはそう……見えるもんな……」

「違う……違うよ、ていとくぅ……」




 差し伸べた彼女の手が触れた彼の腕は、少しねっとりとしていた。


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