【艦これ】まるゆ「隊長が鎮守府に着任しました」
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135: ◆UeZ8dRl.OE[saga sage]
2016/12/16(金) 20:29:31.37 ID:3gtOmS7/0
消えない、消えない、落ちない。
自分の血が、仲間の血が、敵の血が、身体を滴り落ちていく。
こんなのは幻想で、幻覚で、妄想。
昔の自分に血は流れてない。
――でも、私の世界はいつだって血に濡れている。
「シオイ、入るぞ」
「提督? 何か用事?」
至って普通、至って自然。
いつものほんわかとした表情で出迎えるシオイを見て、提督の表情は険しさを増した。
(これは……間に合うのか?)
空の掃除用洗剤のボトル、ゴミ袋にパンパンに詰まった使用後のウェットティッシュ、今も意識してか無意識か、シオイは手を拭いている。
何度も、何度も、何度も。
「何か触ったのか?」
「? あー、落ちないんです」
「何が、落ちないんだ」
「――赤いのが、落ちないんです」
「……そうか」
何も汚れていない、少し強く擦り続けたせいで赤くなっているだけの手。
その手を、しっかりと提督は握った。
「あのー、提督? こういうのはちょっと困っちゃうなー」
「今まで気付いてやれず、すまなかった」
「何を謝ってるの?」
「お前の手は、汚れてなんていない」
「汚れてるよ。ほら、こんなに真っ赤じゃない」
「……」
普段通りに、淡々と、シオイは自分の手を真っ赤だと口にする。
泣いてくれれば、慰めることも出来るだろう。
喚いてくれれば、そっと胸を貸すことも出来るだろう。
だが、ただただ彼女は提督の目をジッと見つめ返すだけだった。
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